| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-395  (Poster presentation)

奈良県の大型養魚池におけるカワウの飛来状況および水上ドローンによる防除の試み
Incoming condition of Phalacrocorax carbo and avoidance of their landing using water drone in a large fishpond in Nara Prefecture

*北野泉水, 河内香織(近畿大学農学部)
*Idumi KITANO, Kaori KOCHI(Kindai University)

カワウ Phalacrocorax carbo(以下カワウ)は魚食性の大型鳥類で,1日に約500gのエサを摂取する.カワウは1970年代初頭までに個体数と分布域が減少したが,2000年には全国で5~6万羽まで回復し,それに伴い内水面漁業被害が社会問題となった.奈良県でもカワウによる漁業被害が発生しており,大型養魚池でのカワウによる食害が深刻となっている. そこで本研究では,ヘラブナの養魚池を調査地として選定した.この池は市街地に存在するため,先行研究で開発されてきた空中用ドローン等の使用が制限された養殖環境となっている.この調査地にてカワウ飛来状況についての基礎的知見収集を行った.また,水上ドローンによる追い払い(以下ドローン)を実施し,施前日と翌日の飛来数を比較し効果を検証した.あわせてドローン稼働中のカワウの様子も観察した.調査には双眼鏡(倍率10×40)と目視を用いた. 飛来状況調査の結果,カワウが最も多数観測されたのは2019年11月で延べ103羽となった.飛来方角別にみると、カワウは北からの飛来個体数が多く観察された。8月~11月のどの月も成鳥の着水が多い結果となったが,11月まで徐々に幼鳥の着水数は増加した.ドローンでは全ての月において実施日に通過個体が増加し,実施翌日に着水個体が実施日よりも増加した.ドローン稼働中のカワウの様子では,9月と11月においてドローン稼働中に着水したカワウが確認され,9月では潜水・捕食行動を行わなかった.ドローンを実施した翌日にはカワウの着水個体数が実施前と同じ水準に戻っていることから,本研究では,水上ドローンは長期的な防除効果は無いと判断した.しかし,空中用ドローン等に比べれば人間に対して安全なカワウ防除方法となりうるため,今後更なる効果の検証がされることが望ましい.


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