| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-396  (Poster presentation)

北海道空知地方におけるずり山の植生回復を規定する要因の検討
Vegetation recovery of spoil heap in Sorachi, Hokkaido

*河合仁美(北海道大学), 森本淳子(北海道大学), 中根貴雄(株式会社フォテク), 酒井裕司(NPO炭鉱の記憶, イメージ.L.P), 中村太士(北海道大学)
*Hitomi KAWAI(Hokkaido Univ.), Junko MORIMOTO(Hokkaido Univ.), Takao NAKANE(PHOTEC Co.Ltd), Yuji SAKAI(Coal mine heritage association, Image Landscape Planning), Futoshi NAKAMURA(Hokkaido Univ.)

  石炭産業を支えてきた炭鉱は、世界各地で採掘が行われた歴史を持つ。北海道空知振興局内でも1882年以降に炭鉱開発が盛んに行われたが、1995年にすべての坑内掘り炭鉱は閉山されている。炭鉱跡地には、ずり山“石炭又は亜炭に係る捨石が集積されてできた山”が存在する。ずり山は、安定性に欠け容易に崩壊するため、ずり山斜面の安定化はきわめて重要な課題である。
  植生回復は斜面の安定性に対し表面侵食を防ぐという点から一定の効果があると考えられる。ずり山は、閉山後初期は植物の生育には厳しい環境であるが、植生は回復する傾向にある。本研究の目的は、植生回復に影響を及ぼすと考えられる要因の相対的な影響度合いを明らかにすること、そして重要であると判断された要因を検討し、植生回復のための指針、管理に資する指標を得ることにある。
  対象地は北海道空知振興局内のずり山15か所とした。ずり山を単位とした植生回復の要因を検討するため、一般化線形モデルで応答変数に植被率と平均樹高、説明変数に広域スケール要因(周辺森林率、TWI(topographic wetness index)、斜度、地形改変割合、植林の有無、閉山してからの経過年数)を設定して、植生回復に及ぼす要因を調べた。さらに、影響があると判断された要因においてSegmented回帰を使用し、閾値の探索を行った。
  本解析の結果、ずり山の植生回復(植被率、平均樹高)に対して斜度、経過年数が高い説明力を持つ変数であることが明らかになった。平均斜度の増大に伴い表面侵食が増大することにより種子が消失し、植物の定着が阻害されていると予想される。年数の経過に伴い、草本植生が侵入し、やがて木本中心の植生へ遷移可能であると示唆された。また、植被率については斜度25°が管理基準の目安として利用できる。25°以下であれば年数の経過に伴い植生は回復する可能性が高いが、25°以上斜度を持つずり山では緑化基礎工や緑化資材導入等の植生回復を助ける必要性が示唆された。


日本生態学会