| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-406  (Poster presentation)

海岸地形と風況がオジロワシ・オオワシの飛翔高度に与える影響
Effects of coastal topography and wind conditions on the flight altitude of white-tailed and Steller's sea eagles

*山内彬弘(徳島大学), 藪原佑樹(千葉県庁, 徳島大学), 佐藤雄大(徳島大学), 内田孝紀(九州大学), 赤坂卓美(帯広畜産大学), 河口洋一(徳島大学)
*Akihiro YAMAUCHI(Tokushim Univ.), Yuki YABUHARA(Chiba prefectural office, Tokushim Univ.), Takahiro SATO(Tokushim Univ.), Takanori UCHIDA(Kyushu Univ.), Takumi AKASAKA(Obihiro chikusan Univ.), Yoichi KAWAGUCHI(Tokushim Univ.)

オジロワシ・オオワシが風車に衝突してしまう、バードストライクが北海道で問題となっている。これまでの調査で、オジロワシのバードストライクは日本海側の海岸線に設置されている風車で多いことが報告されている。また、猛禽類は斜面を駆け上がる風を利用し飛翔するため、海食崖上に建てられた一部の風車で衝突事故が多く起きることが示唆されてきた。しかし、複雑に変化する海岸地形と、そこに発生する両種の飛翔行動に与える影響については不明な点も多い。よって、本研究では、海岸地形と気象条件がオジロワシ・オオワシの飛翔頻度と飛翔高度与える影響を明らかにした。調査は2019年と2020年の1月下旬に、測距双眼鏡を用いて苫前町海岸線を飛翔する2種を観測した。飛翔高度を崖地形と平坦地形で比較したところ、両種において崖地形で飛翔高度が高い傾向があった。また、崖地形ではオジロワシ55%、オオワシ66%が風車ブレードの回転に相当する高度を飛翔していることが分かった。平坦地形においてもオジロワシ35%、オオワシ51%の飛翔がブレード高さを通過していた。次に、飛翔頻度については、西から風が吹いているときに飛翔が多かった。調査地では西側(海側)から安定的な季節風が吹いており、オジロワシ・オオワシはこの風を使って海岸線を移動していると考えられる。飛翔高度の解析では、風況による影響は限定的であり、オジロワシの場合は標高と風向、オオワシでは標高が飛翔高度に対する影響力が強かった。調査地の崖地形は高さ30m前後の場所がほとんどであるため、大型猛禽類の飛翔高度に影響するほどの地形性上昇気流が発生していない可能性がある。また、調査地周辺の平坦地形は河口に位置しており、食物として利用できるものを探すために、飛翔高度を下げたと考えられる。従来は崖地形でのバードストライクに注目が集まっていたが、今後平坦地形の衝突リスクも詳しく見ていく必要がある。


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