| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-005  (Poster presentation)

混獲の空間統計モデリング:VASTによる南極海底延縄漁業の解析
Spatial statistical modeling of bycatch for bottom longline fisheries in the Antarctic Ocean

*澤田紘太, 奥田武弘(水産資源研究所)
*Kota SAWADA, Takehiro OKUDA(Fisheries Resources Inst.)

漁業が生態系に及ぼす影響を評価するには、狙って漁獲する種だけでなく混獲種についても評価しなければならない。漁業データを用いた混獲種の統計解析にあたっては、ゼロ過剰や空間的自己相関などの問題がしばしば生じるため、通常の手法ではうまくモデル化できないことがある。南極海のうち、大西洋の南方に位置する48.6海区では、ノトセニア類のライギョダマシDissostichus mawsoniを主な漁獲対象として、日本・南アフリカ・スペイン共同での底延縄試験操業が行われている。この試験操業は混獲種の分布解明を目的の一つとしているが、前述の問題により統計解析は成功していなかった。本研究では、この試験操業の主な混獲種であるMacrourus属(ソコダラ科)とカナダダラ属の一種Antimora rostrata(チゴダラ科)を対象に、空間構造を考慮した資源量指数(努力量当たり漁獲量)の標準化を試みた。そのための手法として、RパッケージであるVASTを用いたspatial delta-GLMM解析を行った。海底水深による分布密度の違いと、漁船による漁獲効率の違いを共変量として考慮したモデル化の結果、ゼロ漁獲を適切に予測するモデルを推定することができた。考慮する共変量によって資源量指数の推定値は変化したが、その増減傾向は概ね一致していた。本研究では比較的単純なモデルを構築したが、VASTは多魚種を同時に扱うモデルなどより複雑なモデルも推定できる強力なツールであり、漁業と混獲種の関係を理解し、混獲による生態系影響を評価・緩和するために有用であると考えられる。


日本生態学会