| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-044  (Poster presentation)

奥秩父山地の飛翔性昆虫の多様性と種組成のパターン
Patterns in diversity and species composition of aerial insects in Chichibu Mountains revealed by DNA metabarcoding

*梅木清(千葉大学), 一釣直也(千葉大学), 平尾聡秀(東京大学)
*Kiyoshi UMEKI(Chiba University), Naoya ICHIZURI(Chiba University), Toshihide HIRAO(The University of Tokyo)

昆虫群集は森林生態系を構成する重要な要素であり,その多様性や組成は環境条件と関連して大きな空間異質性を持つと想定される。しかし,多数の分類群にまたがる昆虫群集の多様性や組成と環境条件の関係を明らかにした例は少ない。斜面傾斜が急な山地は,狭い地理的範囲内に様々な環境条件を含む。本研究では,そのような山岳地域の森林で採集された昆虫試料の多様性を,DNAメタバーコーディングを用いて評価し,昆虫群集の特徴を把握することを目的とした。
東京大学大学院農学生命研究科付属秩父演習林栃本地区(以後,秩父演習林)を調査地とした。大きな標高差(900m〜1,850m)があり,冷温帯落葉広葉樹林から亜高山帯常緑針葉樹林までの植生帯を含む範囲に30箇所の調査サイトを設置し,2015年7〜8月にマレーズトラップによって昆虫サンプルを採集した。解析対象を双翅目・鱗翅目・膜翅目として,ミトコンドリアCOⅠ領域を対象としたDNAメタバーコーディングによって,サンプルをMolecular Operational Taxonomic Unit(以後,MOTU)に分類した。97%以上の類似性を持つグループを一つのMOTUとした。また,多様性の指標として算出した希薄後のMOTU数を応答変数,環境条件(ササ密度・標高・土壌A0層乾燥リター量・胸高断面積合計・斜面傾斜・斜面方位)を説明変数とする重回帰モデルで変数選択することよって,多様性と環境条件の関係を検討した。さらに,非計量多次元尺度法(NMDS)によってサイトごとのMOTU組成を序列化し,上記の環境条件との関連を検討した。
重回帰モデルには,ササ密度,斜面傾斜,斜面方位(南北方向), 斜面方位(東西方向)が選択されて残った。この内,有意な影響を持っていたのは,斜面傾斜であった。MOTU組成と強い関連を持っている環境要因は,標高と斜面方位(南北方向)であった。秩父演習林の飛翔性昆虫群集の多様性や組成には,標高のほか,斜面傾斜や斜面方位が影響を与えていることが明らかになった。


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