| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-046  (Poster presentation)

直接観察とインターバル撮影カメラを用いた島根県赤名湿地における訪花昆虫群集の解明
Elucidation of pollinator community in Akana Wetland, Shimane Prefecture, using direct observations and interval shooting cameras

*渡津友博(邑南町立羽須美中学校, 広島大学), 保坂哲朗(広島大学), 平岩将良(農研機構・生物研), 井上雅仁(島根県立三瓶自然館), 三島秀夫(島根県立三瓶自然館), 丑丸敦史(神戸大学)
*Tomohiro WATAZU(Hasumi Jr.High., Hiroshima Univ.), Tetsuro HOSAKA(Hiroshima Univ.), Masayoshi HIRAIWA(NARO NIAES), Masahito INOUE(Sanbe Nature Museum), Hideo MISHIMA(Sanbe Nature Museum), Atushi USHIMARU(Kobe University)

 湿地性植物には多くの希少種が含まれ、これらの植物の送粉者も含めた保全は喫緊の課題である。湿地の送粉昆虫群集に関する研究はいくつかあるが、いずれの研究も、日中の訪花昆虫を調査したものであり、夜間の訪花昆虫群集は調べられていない。しかし、湿地性植物には、夜間の訪花昆虫に特殊化した花を持つ種の存在も知られているため、湿地生態系における夜間の訪花昆虫相を調べる必要がある。本研究は島根県飯石郡赤名湿地において、直接観察とインターバル撮影カメラを用いることで、①日中と夜間の訪花頻度は異なるのか、②日中と夜間の訪花昆虫は異なるのか、③夜間の訪花昆虫にもっぱら依存する植物はどの程度存在するのか、を明らかにした。
 直接観察では、2019年4月~11月の8:00~18:00に41種の植物を対象として行った。1×3mの方形区を各植物種あたり2~29個設定し、それぞれで15分間に見られた全ての訪花昆虫を捕獲した。インターバル撮影では、2020年4月~11月に湿地性植物37種を対象とし、2分間間隔で約1日半自動撮影を行った。
 日中の直接観察では、161種49科に属する978個体の訪花昆虫が捕獲された。日中と夜間を含めたインターバル撮影では、合計142,939枚撮影し、1191個体の訪花昆虫が確認された。これらのうち、夜間に撮影された枚数は79枚であり、撮影で確認された全個体の7%以下であった。日中は、双翅目と膜翅目など多様な分類群が訪花する一方で、夜間はガ類と双翅目(ガガンボ類)が中心であった。多くの植物は日中の訪花昆虫の撮影頻度が高かったが、ヒメシロネなど3種は50%以上が夜間の昆虫であった。一方、タヌキモ属2種は、日中・夜間ともに訪花昆虫が確認されなかった。
 赤名湿地では、夜間は、日中と比べて群集レベルでの訪花頻度はかなり低いものの、日中とは異なる訪花昆虫が見られ、これらにもっぱら依存する植物も確認された。湿地生態系においても、夜間の送粉昆虫の重要性も考慮する必要がある。


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