| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-070  (Poster presentation)

同性の競争相手の存在がハゼ科魚類ビワヨシノボリの雌の配偶者選択性に及ぼす影響 【B】
Influences of female mate competition on female mate choice in Rhinogobius biwaensis 【B】

*高橋大輔(長野大学)
*Daisuke TAKAHASHI(Nagano Univ.)

 雌の配偶者選択の変異性は、性淘汰の強度やその方向性に影響を及ぼす重要な要素と考えられている。配偶者選択性の変異をもたらす要因は捕食圧などが挙げられているが、雌間競争を含む雌同士の相互作用が雌の配偶者選択性にどのように影響を及ぼすのかは未だ不明な点が多い。今回、雄が巣内で子育てを行う淡水性ハゼ科魚類ビワヨシノボリにおいて、性的二形の程度を評価するためにモルフォメトリー手法を用いた雌雄の形態比較を行うと共に、同性の競争者の在/不在を操作した水槽実験により雌の配偶者選択性を調べた。雌雄の形態比較を行った結果、背鰭の発達の程度や頭部のサイズにおいて雌よりも雄の方が大きいという雌雄差(すなわち性的二形)が顕著にみられた。そして、雄を巡る競争相手となる雌が不在の水槽において、雌の選好性と雄の全長や肥満度(魚類一般で用いられる生理的コンディションの指標)との間に関連性はみられなかったが、雌は背鰭比(背鰭長/全長)の小さい雄を選択した。一方、競争相手の雌が3個体入った水槽においては、雄に対する雌の配偶者選択性は検出されず、雌は無作為に雄を選んでいると思われた。これらの結果は、同性の競争者の存在は雌の配偶者選択性を変化させることを示唆する。競争雌の在/不在は配偶者選択のコストと関係しており、そのようなコストによって、雌の無作為配偶が起こるのかもしれない。また、今回、雌よりも雄の方が背鰭が大きいという雌雄差がみられたが、少なくとも競争雌不在環境において雌が背鰭比の小さい雄を選好した水槽実験の結果から、本種の背鰭が雄で顕著に発達する理由として、雌の配偶者選択が関与していると考えにくい。今後は、雄の背鰭サイズと卵保護能力との関係性や他のヨシノボリ類との比較を行うことで、本種の背鰭サイズに対する雌の選好性の適応的意義について検討したい。


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