| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-110  (Poster presentation)

エゾマツ林冠木における、細長い葉群を有する一次枝で形成される樹冠形態について 【B】
Tree-crown form developed by primary branches with long and narrow foliage in Picea jezoensis canopy trees 【B】

*関剛(森林総研北海道)
*Takeshi SEKI(FFPRI, Hokkaido)

樹冠形態の形成においては、配置される葉の光条件が重要である。葉の寿命が1年を越える樹種では、新規に配置される葉と過去に配置した葉が同時に存在するため、葉群形成に寄与する枝の伸長方向、および形成された葉群同士の配置関係が葉の光条件に深く関与する。針広混交林および針葉樹林の林冠構成種であるエゾマツ(Picea jezoensis)では、主幹から直接出る枝(一次枝)の多くが直線的に伸長する。エゾマツ林冠木においては一次枝単位での葉群が軸に沿った細長い形状であることから、1)葉群の幅が小さい、2)垂直的距離の小さい枝間では枝の伸長する方位の差が大きい、ことが異なる一次枝単位の葉群間での重なり回避に寄与しているという仮説を立て、樹冠形態の要素について調査した。
 調査は北海道後志地域・中山峠付近の針広混交林で行った。2020年秋時点で樹高22-27 m、胸高直径48-84 cmのエゾマツ林冠木4本の樹冠に登り、幹表面から先端までの長さが50 cmを超えている一次枝のうち、1998-2010年に伸長を開始した枝を調査対象に選定した。枝の垂直方向の位置、幹表面から枝の軸長50 cmごとの葉群の幅、および幹中心から枝の先端に伸長する方位を計測した。葉群の幅は、各個体で平均27-35 cmであった。枝の伸長する方位の差では、垂直的距離40および60 cm以内の枝間を対象に各個体で頻度を調べた結果、枝同士が重なる可能性のある0-20°の方位の差の頻度は明瞭に低くはなかった。
 葉群の幅が平均で30 cm前後であることは、多くの一次枝単位の葉群間に空間を形成する可能性があるが、垂直的距離の小さい枝間では伸長する方位の差が小さい場合があるため、葉群間での重なり回避に必ずしも寄与していない。エゾマツ林冠木の樹冠形態は、葉の光条件において直達光の受光に好適でない部位も含んで形成されていると考えられる。


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