| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-180  (Poster presentation)

赤外線センサーカメラによる中央アルプス高山帯における哺乳類相・鳥類相の把握
Mammal and avian fauna in the alpine zone of the Japan Central Alps, detected by camera trap method

*堀田昌伸(長野県環境保全研究所), 尾関雅章(長野県環境保全研究所), 黒江美紗子(長野県環境保全研究所, 長野県環境部), 峰村政輝(長野県環境部), 植松永至((株)EAC), 松宮裕秋((株)EAC)
*Masanobu HOTTA(Nagano Environ Cons Res Inst), Masaaki OZEKI(Nagano Environ Cons Res Inst), Misako KUROE(Nagano Environ Cons Res Inst, Environ Dept, Nagano Pref), Masaki MINEMURA(Environ Dept, Nagano Pref), Eishi UEMATSU(Environ Assess Center Co, Ltd), Hiroaki MATSUMIYA(Environ Assess Center Co, Ltd)

 2018年にライチョウ成鳥雌1個体が木曽駒ヶ岳で確認されたことを契機に,中央アルプスでライチョウ個体群の復活に向けた取り組みが進められている。長野県環境部では,中央アルプスにおけるライチョウの生息環境としての高山植生や哺乳類相等の現状把握を進めている。
 中央アルプス高山帯に生息する哺乳類及び鳥類を把握するため,2020年7月19日〜22日に,木曽駒ヶ岳周辺に7台,檜尾岳〜木曽殿越に5台,空木岳〜南駒ヶ岳に6台,計18台を設置し,9月下旬から10月下旬に回収した。千畳敷カール下部と木曽殿山荘周辺の2台を除き,残りの16台は2,650m以上の高山植生に設置した。
 今回の調査により,6目10科10種の哺乳類及び2目5科9種の鳥類が確認された。哺乳類の中で,撮影地点数,撮影回数ともに最多であったのはノウサギであった。ライチョウの捕食者と考えられるキツネは檜尾岳以南の4ヶ所,テンは10ヶ所で撮影されたが,ライチョウの卵やヒナの捕食者と考えられるオコジョについては撮影されなかった。2015年には,東大天井岳でライチョウのヒナを捕獲するニホンザルが確認された。そのニホンザルについては,木曽駒ヶ岳周辺で多く撮影され,親子を含む少なくとも23頭の群れが確認されたが,檜尾岳以南では檜尾岳と空木岳周辺の2ヶ所で1回ずつの撮影であり,群れは確認されなかった。南アルプスや八ヶ岳などで高山植生に大きな被害を与えているニホンジカについては,木曽駒ヶ岳周辺の1ヶ所,木曽殿越の1ヶ所,空木岳〜南駒ヶ岳の2ヶ所で確認された。鳥類については,高山帯から亜高山帯にかけて生息する9種が撮影された。最も多く撮影されたのはイワヒバリであり,次いでホシガラス,カヤクグリの順であった。ライチョウについては,木曽駒ヶ岳周辺の2ヶ所で撮影され,1ヶ所では10/4に4羽の群れが確認された。今回,哺乳類の糞調査も合わせて実施したので,両手法による比較検討を行い,ライチョウの生息環境としての中央アルプスの状況について考察する。


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