| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-188  (Poster presentation)

感染症の生態学研究のためのツールとしての環境DNA
Environmental DNA as a tool for studying the ecology of infectious diseases

*源利文(神戸大・院・発達)
*Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

マクロ生物の環境DNA分析は、水中の魚類や両生類などを検出する技術として、ここ10年ほどの間に発展し、今ではほぼ市民権を得たと言って良い。微生物の環境DNA分析はそれよりも以前から当たり前に行われており、環境サンプルからあらゆる生物の生息情報を得ることが可能であると考えられる。このような技術を感染症の生態学に応用しようとする取り組みは、まだ多くはないが少しずつ報告されるようになってきた。感染症は殆どの場合ある生物(ここではウイルスを含む)が別の生物に寄生することによって、引き起こされる。つまり、生物間相互作用の一つであり、純粋に生態学で取り扱われるべきトピックの一つであるが、日本の生態学会ではあまり取り扱われていない。病原体と宿主という大きく離れた分類群に属する生物を同時に取り扱うことの難しさがあると考えられる。先に述べたように、環境DNA分析は微生物から大型生物まであらゆる生物を検出可能であるため、感染症の研究のためのツールとして有望である。本発表では、病原体の検出によるリスクマップの作成、病原体と宿主の同時検出による両者の同所的生息状況の確認、病原体の自然宿主の推定などに環境DNA分析が利用された例について紹介し、環境DNA分析を用いた感染症生態学の新たな展開について議論したい。


日本生態学会