| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-191  (Poster presentation)

アオコの発生した湖におけるeDNA メタバーコーディング: 中国太湖を事例として
Application of fish eDNA metabarcoding in a lake with algal blooms: A case study in Lake Taihu in China

*邬倩倩(神戸大・院・発達), 坂田雅之(神戸大・院・発達), 吴德意(中国交通大・理工), 山中裕樹(龍谷大・院・先端理工), 源利文(神戸大・院・発達)
*Qianqian WU(Kobe Univ.), Masayuki K. SAKATA(Kobe Univ.), Deyi WU(Jiao Tong Univ. CHN), Hiroki YAMANAKA(Ryukoku Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

近年、環境DNA(eDNA)メタバーコーディング技術は生物多様性調査に適用されている。本技術は主に貧栄養若くは中栄養の水域を中心に研究を進められてきたが、富栄養化した水域における研究例は極めて少ない。富栄養化した水体は窒素やリンの含有量が特定の濃度に達すると、アオコが発生しやすくなる。アオコの発生した水域は、貧酸素になりやすく、生物に害を及ぼす可能性もある。そこで本研究ではアオコが大量に発生する代表的な富栄養湖である中国太湖を事例とし、魚類eDNAメタバーコーディング技術の実用性を確認した。調査は2016年12月にはアオコの発生した2地点とアオコの発生していなかった1地点の合計3地点、2017年8月にアオコの発生した地点と発生していなかった地点それぞれ3地点の合計6地点で行い、各地点から500mLの水サンプルを2本ずつ採取した。その結果、全サンプルから合計27種の淡水魚が検出された。アオコの有無によって、検出された種の組成に違いはなかったが、検出された種数を比較した結果、アオコの発生していなかった地点の方が検出された種数が多かったことが分かった。先行研究によると、太湖は1980年代後期、大きな環境変化により環境変動に敏感な種が淘汰され、アオコが発生しやすい環境でも適応できる種のみ生き残っていると報告されている。このことから、本研究で検出された種の組成に差がなかったことは、環境変動に強い種が太湖に広く分布していることを反映していると考えられる。また、本研究では、アオコの有無によって濾過量に違いが見られ、濾過量が増加すると検出される種数も増える。濾過量が検出された種数に影響を与えたと考えられる。以上の結果を踏まえ、将来eDNAメタバーコーディング技術を用いて同様の環境下で生物多様性を把握するには、検出種数を最大化するために濾過量を増やすことを推奨する。


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