| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-213  (Poster presentation)

外来生物の分布拡大予報2020:信頼性の検証 【B】
Biological invasion forecast 2020: Reliability test 【B】

*小池文人(横浜国立大学)
*Fumito KOIKE(Yokohama National University)

外来生物(新興感染症を含む)はヒトを含む生態系に大きな被害をもたらす深刻な脅威である.グローバル化により近年では2017年からのヒアリ,2018年からのイノシシと豚のCSF(旧豚コレラ),2019年のツマジロクサヨトウ,2020年のヒトの新型コロナウイルス感染症,2020-2021冬期の鳥インフルエンザ,侵入警戒中のASF(旧アフリカ豚コレラ)など緊急の対応が必要な事態が続いている.有効な対策のためには,あらかじめ侵入場所と侵入時期を予測して備えることが重要であり,また企業経営における投資の意思決定など経済的にも重要な情報であるため,外来生物の分布拡大予測が求められている.ホームページ「外来生物の分布拡大予報」http://vege1.kan.ynu.ac.jp/forecast/では2009年から外来生物の分布拡大の予測結果を公表してきた.2020年にはツマジロクサヨトウ,野生イノシシのCSF,新型コロナウイルス感染症などの予測を随時公表した.予測を公表してゆくには専門家による評価が必要であり,当報告はそのレビューの一環として公表した予測をその後の分布拡大結果と比較して検証する.なおツマジロクサヨトウは2020年1月に沖縄や奄美などで確認されたが,4月に九州本島南部から拡大を再開し8月には北海道に至った.ウラナミシジミなどのように冬期に温帯で死滅し春・夏期に季節風で分布拡大する種として定着した可能性がある.CSFは分布域を拡大して東北地方南部に到着し,新型コロナウイルス感染症は全国に分布拡大して対策による増減を繰り返している.分布拡大予測には拡大メカニズムや人為的な導入経路を明示的にあつかうアプローチと,メカニズムを利用せず過去の分布拡大事例との比較から予測する統計学・機械学習的アプローチがあるが,ここでは両者を融合したアプローチを採用している.


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