| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-228  (Poster presentation)

神奈川県藤沢市の水田で採集されたヌマガエルFejervarya kawamuraiの体長組成
Body size composition of Fejervarya kawamurai captured in paddy fields, Fujisawa City, Kanagawa Prefecture, Japan

*高橋慶伍, 竹内寛彦(日本大学)
*Keigo TAKAHASHI, Hirohiko TAKEUCHI(Nihon Univ.)

 ヌマガエル Fejervarya kawamurai は,日本国内では本州中部以西に自然分布する.しかし,近年,自然分布域外である関東地方の各地に移入されており,本種が生態系に及ぼす影響が懸念され,駆除が求められている.国内外来種としてのヌマガエルに関して,食性,分布域に関する報告はあるものの,集団内の年齢構成や繁殖期間といった生活史に関する報告は知られていない.国内外来種としての本種の基礎生態の解明や,それを応用した効率的な駆除法を確立する場合,生活史に関する情報が必要となる.そこで,私たちはヌマガエルが移入されている神奈川県藤沢市引地川周辺の水田にて,本種の季節毎(半月毎)の体長組成およびオスの二次性徴の有無を調べることで,本地域での本種の生活史の解明を試みた.本調査地でヌマガエルが確認された期間は4月上旬~10月下旬であり,広告音の有無から判断すると繁殖期は5月上旬~8月上旬であった.得られた体長組成データによって本調査地におけるヌマガエルの成長過程が推定された.成体(オス・メス)の出現は4月上旬~8月下旬に限られ,変態した幼体は7月上旬~10月下旬に出現した.幼体は7月下旬~8月上旬に急速に成長し,遅くとも翌年には成熟すると判断され,成体は繁殖期を終えると間もなくして消失することから,本調査地のヌマガエル集団は1年未満齢の個体で構成されていると考えられた.本研究により,本調査地におけるヌマガエルの生活史の一部が解明された.こうした調査の継続は,効果的な駆除法の開発にも応用できうると考えられた.


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