| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-237  (Poster presentation)

島根県三瓶山麓の半自然草原におけるセイタカアワダチソウの分布と土壌の特性
Distribution and soil characteristics of Solidago altissima in the semi-natural grasslands at the foot of Mt. Sanbe, Shimane Prefecture

*井上雅仁(島根県立三瓶自然館), 高橋佳孝(草原再生ネットワーク)
*Masahito INOUE(Shimane Nature Museum), Yoshitaka TAKAHASHI(Grassland Regeneration Network)

島根県三瓶山の山麓には小面積ではあるが,火入れや放牧などにより維持されている半自然草原が残っている.多くの絶滅危惧植物の生育地であること,また地域を特徴づける風景であることなどから,生物多様性保全上も景観上も重要な場所といえる.
近年,山麓一帯や半自然草原において,外来植物であるセイタカアワダチソウの生育がみられるようになった.本種の著しい繁茂は在来種の生育地の圧迫を招き,生物多様性保全上,様々な課題が生じることが指摘されている.そこで本研究では,三瓶山周辺での本種の分布特性や半自然草原内での生育環境を把握することを目的とし,当地での分布状況,植生構造や土壌条件などの調査を行った.
半自然草原内では,セイタカアワダチソウの生育がある場所を対象に,2m×2mの方形区を12箇所設置した(生育区とする).植生構造の調査として,各方形区で植生高,各種の高さと植被率などを記録した.また土壌条件の調査として,方形区周辺から土壌を採取し,土壌pHや有効態リン酸などを分析した.また本種の生育が無い箇所(対照区)でも植生構造と土壌条件の調査を行い,生育区と比較した.
植生構造については,生育区の平均植生高は1.53m,植被率は97.9%であった.セイタカアワダチソウの高さは1.01m~2.40m(平均高1.81m),植被率は35%~90%(平均植被率70.9%)であった.土壌条件については,pH(H2O)の平均は5.33,有効態リン酸の平均は60.0mg/100gであった.対照区での土壌調査結果と比較すると,pH(H2O)には大きな違いはみられなかったが,対照区の有効態リン酸はいずれの箇所でも大幅に低く,本種の生育箇所は有効態リン酸に富む立地であることが明らかになった.


日本生態学会