| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-245  (Poster presentation)

生物多様性を研究する大学研究室と地域社会の関係 【B】
Relationship between biodiversity laboratory and community 【B】

*Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.), Rasna MISHIMA(Grad. School Meiji Univ.), ximei WU(Grad. School Meiji Univ.)

 生物多様性の研究室は学問だけでなく地域との関係によって特徴づけられる。明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室と地域との関係をキャンパスのある地域と離れた調査地に分けて述べる。カッコ内は主体を表す。
 キャンパスのある地域については、多摩区3大学連携事業(研究室)として、水質浄化は川崎市の寺子屋事業として小学生の活動を行い、地形は直接市民に広報してワークショップを実施した。後者は好評であった。自然おもしろ発見(学生)は植物の楽しみ方を中心に、生田緑地で公募および行事として実施した。生田の歩き方(大学院生)は地形から地域を楽しむ内容で、公募により19回のシリーズで実施した。固定した参加者が多く好評であった。
 キャンパスから離れた調査地のある地域については、千代田学(研究室)では、公園の鳴く虫と植生の調査を行い、区役所を介して、児童館や学校に普及活動を行った。児童館では好評であったが、区民との関係は希薄であった。カワラノギクプロジェクト(研究室)は、研究者、市民、河川管理者、地元自治体の協働であった。地元のNPOを介した市民との関係はうすかった。礫河原研究(研究室)では市民との関係は地元の研究者が介在しワークショップ等では研究者の講演と市民の関心にギャップがあった。学生および大学院生の調査地では、指定管理者との関係が主で、ボランティアに教えてもらうこともあった。教員の場合は、市役所と指定管理者が市民との間に介在し、直接的な関係は一部の市民にとどまった。
 地域と研究室のニーズはミスマッチであった。地域のニーズとしては好奇心を満たしたいことや大学から正しい答えを知りたいということが主であるのに対し、研究室のニーズとしては、市民が自ら科学してほしい、研究としておもしろいことをやりたいというものであった。ミスマッチの解消策として市民による科学活動の理解および生物多様性概念の普及を提言したい。


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