| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-17  (Poster presentation)

スクミリンゴガイの遺伝子型の推定
Estimation of the genotype of the channeled apple snail

*三村侑暉(大阪府立富田林中学校)
*Yuki MIMURA(Osaka Pref. Tondabayashi Jr HS)

2020年6月に近くの水田でスクミリンゴガイを採集したところ,軟体部が黄色で,他の個体と明らかに異なる色の個体を発見した。インターネットで調べたところ,それはアルビノ(白色)個体で,本種の体色は「メンデルの法則」の一遺伝子雑種に従って遺伝することが明らかになっていることを知った。しばらく飼育すると,水槽のふたに卵塊が産みつけられていること,その数日後,ふ化した稚貝が水中をはっていることに気がついた。そこで,稚貝の体色などから,親貝の遺伝子型を推定することを目的に本研究を行った。
観察は,大阪府と奈良県の水田で採集した軟体部が黒色の野生個体と黄色のアルビノ個体を用いて,幅約30㎝の水槽で行った。【水槽1】は野生2個体とアルビノ1個体,【水槽2】は野生のみ10個体,【水槽3】はアルビノのみ6個体の3通りの親貝の組み合わせで飼育した。産みつけられた卵塊の数とふ化した稚貝の体色ごとの個体数を調査した。その結果,【水槽1】は卵塊が1つ,稚貝が野生8個体とアルビノ9個体,【水槽2】は卵塊が4つ,稚貝が野生85個体とアルビノ8個体,【水槽3】は卵塊が1つ,稚貝が野生13個体とアルビノ9個体を確認した。
以上の結果をもとに,親貝の遺伝子型について考察した。【水槽1】は,理論上,稚貝の野生:アルビノ=1:1として考えると,親貝の遺伝子型(表現型)がAa(野生)とaa(アルビノ)となる。【水槽2】は,4つの卵塊からふ化した稚貝が混ざり合ったので,親貝の遺伝子型を推定するのは不可能である。【水槽3】は,理論上,稚貝の野生:アルビノ=1:1として考えると,親貝は、遺伝子型(表現型)がAa(野生)とaa(アルビノ)となる。アルビノの母親から生まれたことから,父親の遺伝子型(表現型)はAa(野生)と特定でき,採集前に交尾していたことになる。今回の研究は飼育中に思い立って始めたものであったが,今後は計画的に本種の遺伝について研究を行いたい。


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