| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S01-3  (Presentation in Symposium)

生物間相互作用の有向グラフ分析と群集動態
Evaluating community interaction dynamics by using directed graph analysis

*藤田博昭(京都大学)
*Fujita HIROAKI(Kyoto University)

群集動態を考える上で、生物間相互作用は欠かせない要因である。しかし、その定量性の困難さから、複雑群集を用いた実証研究は行われてこなかった。その解決方法として、近年、発展してきたEmpirical dynamic modelling (EDM)という手法があげられる。この手法は、比較的短い時系列データから、変数間の因果関係とその強さを推定する手法である。つまりは、生物間相互作用ネットワークを構築可能とさせる。
 多くの微生物分野の実証研究において、種間相互作用ネットワークは相関関係から推定されてきたが、そこに相互作用の方向性を決めることはできず、無向グラフによる分析に留まってきた。しかし、EDMにより推定されたネットワークは方向性があり、有向グラフを用いた分析が可能となり、種間相互作用の研究について新たな知見を得ることができる。
 今回の発表では、6つの異なる系に属する、延べ48の細菌群集の時系列データから得られたネットワークトポロジーの特徴について紹介する。ネットワークの階層性は、その安定性に寄与されると考えられている。本研究ではCorominas-Murtra(2013)が述べている3つの階層性指標について計算し、それらの指標と種間相互作用行列の固有値の関係性に検討した。最終的には、生物間相互作用ネットワークの構造が安定性にもたらす影響について、新たな知見を与えられるかについて、議論を行いたいと考えている。


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