| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S14-1  (Presentation in Symposium)

干潟タイドプールにおける魚類群集と底質環境
Fish communities and sediments in soft-substrate tide pools

*國島大河(和歌山県立自然博物館)
*Taiga KUNISHIMA(Wakayama Prefectural Museum)

生物多様性のホットスポットである琉球列島では,多くの島嶼に干潟が存在し,多様な魚類が干潟を生息場として利用している.一方,干潟環境は悪化の一途を辿っており,保全策の提言が求められている.干潟には泥干潟や砂干潟など様々な底質環境が含まれ,有効な保全策を模索するためには底質環境を加味し出現種や群集の特性を把握する必要がある.特に干潟タイドプールで優占するハゼ科魚類は,微細環境(特に底質環境)の選好性が高いため,干潟環境の指標種になりうる.本発表では,干潟に出現するハゼ科魚類の群集構造を基に,琉球列島において優先的に保全すべき干潟の抽出を試みた自身の研究例を紹介する.本調査では,宮崎県から西表島に至る7地域44地点の干潟で,干潮時,各干潟のタイドプールに1mのコドラートを設置し,出現魚種とその個体数,11項目の微細環境を記録した.粒径分布の平均値から全干潟を3つの底質タイプに分けた結果(泥質,砂質,砂泥質),出現した魚類の群集構造が底質タイプによって大別された.各底質タイプでの優占種や指標種をそれぞれの代表種として抽出し、生息環境を推定したところ,底質硬度や粒度といった底質環境と塩分によって説明できた.また,同所的に出現する魚種を示したネットワーク図からグループ分けをすると,底質タイプによってその組み合わせが異なっていた.泥質では複数のグループが含まれていたのに対し,砂質では出現種の同所性が高く,泥質の出現種は,生息場所への依存性が高いといえる.また,代表種は各グループ内でハブ的な位置におり,干潟環境の指標として利用できると考えられた.以上を踏まえて, 23ヵ所の干潟環境を保全することにより,本研究での出現種106種中89種,希少種全19種を保全できると想定された.このように,干潟における底生性魚類の群集多様性や希少種を保全するには、底質環境の多様性を考慮することが重要だと考えられた.


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