| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S15-1  (Presentation in Symposium)

夜行性動物による送粉サービス
Pollination services provided by nocturnal animals

*船本大智(神戸大学)
*Daichi FUNAMOTO(Kobe Univ.)

 ガ類やコウモリ類などの夜行性動物は様々な植物種において重要な花粉媒介者である。夜行性動物による花粉媒介に関する多くの研究は、ガ媒花などの夜行性動物による花粉媒介に大きく依存した花に注目してきた。一方で、様々なグループの訪花動物によって花粉媒介される植物種において、夜行性動物の花粉媒介における貢献を調べることも重要だと考えられる。例えば、昼行性昆虫類によって主に花粉媒介される植物種においても、夜行性ガ類は花粉媒介に貢献しているかもしれない。本講演では、早春に開花するキブシにおいて夜行性ガ類が花粉媒介に貢献していることを示した事例を紹介する。キブシの花には昼行性昆虫類と夜行性ガ類が訪花することが観察されてきたものの、夜行性ガ類の花粉媒介への貢献は示されていなかった。袋がけによる昼夜の花粉媒介者の選択的排除実験によって、キブシにおける昼行性昆虫類と夜行性ガ類の花粉媒介への相対的貢献度を調べた。その結果、キブシは昼行性昆虫類にもっぱら花粉媒介されるものの、夜行性ガ類も花粉媒介に貢献していることが分かった。これまでの送粉サービスに関わる研究の多くはハナバチ類を中心とした昼行性花粉媒介者に着目しており、ガ類などの夜行性花粉媒介者を対象とした研究事例は少ない。しかし、夜行性花粉媒介者はこれまで想定されていたよりも多くの植物で花粉媒介者としての役割を果たしている可能性がある。


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