| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W08-3  (Workshop)

森林再生に有効な風倒後の管理施業はなにか?-中~長期的影響評価-
What are effective post-windthrow practices for reforestation? - Medium to long term assessment-

*森本淳子(北海道大学), 鈴木智之(東京大学), 尾張敏章(東京大学)
*Junko MORIMOTO(Hokkaido Univ.), Satoshi SUZUKI(Univ. Tokyo), Toshiaki OWARI(Univ. Tokyo)

気候変動による風倒かく乱の激甚化に対して、森林管理においても適応策を講じる必要に迫られている。森林の風倒後にできる適応策として、風倒跡地の扱いは重要な課題である。倒木搬出、地がき、地拵え、植栽等の風倒後の施業が生態系へ与える影響について、世界的に懸念が高まっている。特に、積雪寒冷地の森林では、温暖化による昆虫の大発生や、積雪深の減少によるシカの個体数増加と採食圧の増大、ササ地の拡大による樹木更新阻害が予想されることから、より慎重に取り組む必要がある。風倒後の森林管理が、森林の初期再生に与える影響については多くの研究報告がある。風倒木除去だけでなく、地拵えや植栽といったより強い人為的インパクトによって、前生樹や微細地形が破壊されるため、種組成が草本主体になり、バイオマスが抑制されることが明らかになっている。一方、成長の遅い北方林の将来を見据えるために十分な期間にわたり観測された研究報告は限られている。そこで、積雪寒冷地の針葉樹林や針広混交林におけるいくつかの事例をもとに中期(15年~40年後)・長期(約60年後)のバイオマスと種組成に対する影響評価をレビューし、森林再生の課題について議論した。その結果、以下の様に整理できた。1)中期的影響:シカ採食圧が低い場合、倒木除去のみなら成林するが、地がき・広葉樹植栽・播種はササ地化・カンバ密林化を招く。シカ採食圧が高い場合、倒木除去が採食を助長し、植栽木や自然侵入木の成長を抑制する。2)長期的影響:風倒木除去のみならば前生樹が残るため、バイオマスや種組成への影響は限定的。ただし、倒木依存種の侵入が期待できないため次世代へ影響が予想される。3)前生樹が十分に残されている場合は倒木残置、残されていない場合には針葉樹植栽が適当だが、虫害を見込んだ残置場所の選択や、温暖環境での成長を見込んだ植栽樹種の選択など、細やかな配慮が必要である。


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