| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W12-3  (Workshop)

植生がカルシウム動態を介して、河川・土壌無脊椎動物に与える影響
Effects of vegetation types on stream and soil invertebrates through alteration of calcium dynamics

*太田民久(富山大学), 日浦勉(東京大学)
*Tamihisa OHTA(Toyama Univ.), Tsutomu HIURA(Tokyo Univ,)

樹木がもたらす栄養塩の空間変異は、ときに集水域レベルといった大きなスケールまでおよぶことがあり、他の動植物の群集組成や生態系機能に大きな影響を与え可能性がある。しかし、栄養塩の空間変異がどのようなメカニズムで他の生物に影響を与えているか、明確に示した研究は非常に少ない。我々のこれまでの研究で、スギなどの特定の樹種が優先している森林では、広葉樹の森林と比較して、土壌および河川水中のカルシウム(Ca)濃度が上昇することが分かってきた。スギは有機酸の放出速度といった根の活性が高く、母岩から多くのCaを溶出させ吸収することで、Caの動態を変化させることも分かってきた。そして、集水域にスギ林が優占するような河川では、母岩由来のCaが河川水に多く含まれることが、ストロンチウム同位体比分析を行うことで分かってきた。さらに、そのCa濃度の変化に影響され、外骨格に多量のCaを含む甲殻類の密度が土壌および河川において劇的に変化することも分かった。つまり、森林植生は母岩-土壌-河川間のCaの空間変異をもたらし、系内に生息する無脊椎動物群集にまで影響を与えていることが分かってきました。さらに、その継続研究として、多く存在するスギの地理変異種を比較したところ、Ca動態に影響をおよぼす効果は変異種間で有意に異なることも分かってきた。本自由集会では、我々の今まで研究を要約し発表する。


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