| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-04  (Oral presentation)

倒木の腐朽型は樹木実生の定着に影響を与えるか
Does wood decay-type affect the establishment of tree seedlings?

*北畠寛之, 深澤遊(東北大学)
*Hiroyuki KITABATAKE, Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)

森林内で腐朽した倒木は、樹木の重要な更新場所となる。近年の研究から、菌類による材分解によって生じる材の物理化学性の違いを反映した腐朽型(白色腐朽や褐色腐朽)の違いが、倒木上で更新する樹木実生の定着や成長に影響を与えることがわかってきた。実生の倒木上更新と腐朽型の関係には、実生の菌根タイプ(アーバスキュラー菌根(以下AM)と外生菌根(以下ECM))が関係するという報告もあるが、その詳しいメカニズムはわかっていない。そこで本研究では、倒木および土壌を基質とし、倒木上での更新が知られているAM性樹種6種、ECM性樹種6種の種子を用いた播種試験により、倒木の腐朽型が実生定着のどの生育段階(発芽・生長・生存)に影響するかを明らかにすることを目的として研究を行った。
山形県千歳山の二次林において、3種類の基質(褐色腐朽型倒木、白色腐朽型倒木、土壌)に12樹種の種子を播種した。樹種によって1年または2年間生存モニタリングを行い、試験終了後、すべての生存個体を回収し、発芽率、成長量(シュート長、乾燥重量)、生存率を算出した。基質の含水率、養分イオン濃度、pH、開空率を測定し、基質サンプルから抽出した菌類rDNAのITS1領域を対象としたメタバーコーディングにより菌類群集の調査を行った。これらの変数と実生の発芽率、生存率、成長量との関係を、一般化線形混合モデルにより解析した。
基質の種類はAM性樹種のシュート長およびECM性樹種の生存率に影響していた。AM性樹種のシュート長は白色腐朽よりも褐色腐朽した倒木上で大きく、これには褐色腐朽の高い含水率やAM菌感染率が影響の理由として考えられた。ECM性樹種の生存率は褐色腐朽よりも白色腐朽で高かったが、この理由はよくわからなかった。


日本生態学会