| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-05  (Oral presentation)

農地への肥料投入はファンクショナルに行われているか? 【B】
Dose farmer decide fertilizer application to farmland functionally ? 【B】

*三島慎一郎(農研機構(国))
*Shinichiro MISHIMA(NARO Japan)

【緒言】食飼料作物の収穫による窒素:N・リン:P・カリウム:Kの持ち出しに比して過剰な化学肥料と家畜ふん尿堆肥の投入が過剰なため、農地土壌に蓄積し流出することが、食飼料生産の持続性を損ない水系汚染等の環境に負の影響を与えている。食飼料全体でみたNPの過剰量は示されてきたが(OECD 2008)、作物ごとに見た過剰量は充分に検討されていない。本研究では全国単位で行われてきた農地土壌への肥料の施用管理に関する調査個票と統計情報から、日本の農地におけるNPKの投入過剰量と作物による投入されたNPKの利用率(NUE)を作物ごとに求め、持続的食飼料生産に必要な肥料利用について考察した。付加的に堆肥を与えるか否かでの化学肥料のNPKの投入量の違いがあるかを明らかにした。【材料と方法】作物は水稲・畑作物・野菜・果樹・茶・飼料作物・牧草の7つに分けた。農林水産省が2008~2012年に行った土壌炭素等モニタリング事業で対象圃場の化学肥料・各種堆肥の施用に関する15,000件以上ある調査個票を元に、化学肥料・堆肥の施用量をMishima et al. (2012)の方法で求め古谷(2008)のNPK濃度からNPK施用量に変換した。調査年の中央である2010年の食飼料作物の生産量を農林水産省統計から求め、7訂食品標準成分表等の濃度でNPK量に変換した。【結果と考察】堆肥の施用の有無で化学肥料の施用に有意差はなかった。国単位で見ると堆肥として206GgN, 109GgP, 209GgK、化学肥料として338GgN, 147GgP, 233GgKが与えられ、299GgN, 60GgP, 116GgKが作物として収穫され、254GgN, 196GgP, 326GgKが農地で余剰となった。NUEはN:55%, P:23%, K:26%であった。NPK何れでも野菜で余剰が最も多く果樹が続き、NUEはNPKいずれでも果樹が最も低く野菜が続いていた。換金作物である野菜と果樹では化学肥料・堆肥の施用が多く、加えて果樹では収穫されるNPK量が7作物中最も少ない。これら作物への化学肥料・堆肥の適正化が農業生産の持続性向上には必要になると考えられる。


日本生態学会