| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-02  (Oral presentation)

琵琶湖におけるタイヨウチュウの季節空間変化
Seasonal and spatial variability of heliozoa in Lake Biwa

*吉田潤哉, 中野伸一(京都大学)
*Junya YOSHIDA, Shinichi NAKANO(Kyoto Univ.)

 水圏に生息する原生生物のタイヨウチュウは、球形の細胞体から多数の軸足を伸ばしており、軸足に捕捉された餌生物を取り込んで捕食する待ち伏せ型の戦略をとる生物である。タイヨウチュウに関する生態学的研究はこれまでほとんど行われておらず、タイヨウチュウの現存量や組成についての定性的・定量的なデータは世界的に不足している。本研究では、琵琶湖において、タイヨウチュウ個体密度の季節動態と鉛直分布、水平分布の調査を行った。
 調査は、2020年8月から2021年の12月まで、月二回以上の頻度で琵琶湖の北湖と南湖において行った。北湖においては、表層と深層の二水深から採水した。試水はプランクトンネットで濃縮し、顕微鏡下でタイヨウチュウの細胞数を計数した。鉛直分布調査は、2020 年と2021 年の秋に行った。北湖の複数の水深から採水し、酸性ルゴール液で固定したサンプルを顕微鏡下で計数した。水平分布の調査は、2021年11月に行った。琵琶湖の北湖と南湖の沖帯と沿岸帯の10地点から採水し、酸性ルゴール液で固定して顕微鏡下で計数した。
 琵琶湖において、タイヨウチュウの個体密度は、数週間で急激に変動し、個体密度のピークが秋季から冬季と春季に見られた。タイヨウチュウ個体密度と水温は上に突の関係を示した。南湖において、タイヨウチュウ個体密度と二週間前のクロロフィルa濃度との間に有意な正の相関関係が見られたことから、タイヨウチュウが藻類を餌資源としていることが示唆される。鉛直分布の調査において、タイヨウチュウ個体密度は、表層で高くなり、深層では急激に減少した。水平分布の調査では、南湖において北湖に比べて高いタイヨウチュウ個体密度を記録した。この理由として、水草を生息場とするタイヨウチュウの存在や、湖底堆積物のかく乱によるタイヨウチュウの供給が考えられる。


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