| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) F03-09  (Oral presentation)

北海道知床半島におけるニホンジカのメス成獣生存率及び要因別死亡率
Survival and cause-specific mortality of female sika deer in Shiretoko Peninsula, Hokkaido

*宇野裕之(東京農工大学), 長雄一(北海道立総合研究機構), 上野真由美(北海道立総合研究機構), 亀井利活(北海道立総合研究機構), 石名坂豪(知床財団), 山中正実(知床財団), 雨谷教弘(知床財団), 下鶴倫人(北海道大学)
*Hiroyuki UNO(Tokyo Univ. of Agri. & Tech.), Yuichi OSA(Hokkaido Research Organization), Mayumi UENO(Hokkaido Research Organization), Toshikatsu KAMEI(Hokkaido Research Organization), Tsuyoshi ISHINAZAKA(Shiretoko Nature Foundation), Masami YAMANAKA(Shiretoko Nature Foundation), Norihiro AMAGAI(Shiretoko Nature Foundation), Michito SHIMOZURU(Hokkaido University)

野生動物個体群の動態を把握し、保全管理を行っていく上で、生存率は最も基本的な個体群特性である。本研究は、増加したニホンジカ(Cervus nippon)により自然植生が劣化した知床半島において、生態系維持回復を目的として個体数調整を実施している地域(幌別岩尾別HB)と非実施地域(ルシャRU)において実施した。2019~2020年に生体捕獲したメス成獣41頭(HB20、RU21頭)についてラジオトラッキングを行い、Heisey and Patterson (2006) のKaplan-Meier法を用いて生存率及び要因別死亡率を推定した。2019年6月~2021年9月までの追跡期間中、HBで4頭(ヒグマによる捕食1、捕獲3頭)、RUで4頭(捕食1、その他3頭)の死亡が確認された。年生存率はHB:0.82(95%CI:0.70-0.95)、RU:0.87(0.77-0.98)、捕食を含む自然死亡率はHB:0.04(0.0-0.09)に対してRU:0.13(0.03-0.23)であった。一方、捕獲による人為死亡率はHB:0.15(0.04-0.26)であった。出生率の変動幅を0.83-1.00、幼獣生存率を0.10-1.00(Uno 2006)と仮定して、決定論的な感度分析を行った結果、HB及びRUともに年増加率は1.0を上回り、現状のメス成獣生存率が維持された場合、個体群は安定または増加することが示唆された。


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