| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-12  (Oral presentation)

ジャスモン酸類縁体を用いたミナミキイロアザミウマのキュウリ苗への定着抑制効果
Repellent effects of a jasmonic acid analog against the melon thrips, Thrips palmi on cucumber plant

*安達修平, 冨髙保弘, 櫻井民人(農研機構・植防研)
*Shuhei F. ADACHI, Yasuhiro TOMITAKA, Tamito SAKURAI(NARO)

近年、ジャスモン酸の類縁体であるプロヒドロジャスモン(PDJ)を植物に処理することで、植物体内のジャスモン酸を上昇させ、アザミウマ類などの植食性昆虫の定着を抑制する病害虫防除技術が注目されている。本研究では、キュウリ苗に、PDJを主成分とするジャスモメート液剤(以下、液剤)を処理することで、ミナミキイロアザミウマの定着および、それに続く食害の抑制が可能かどうか検証した。液剤の処理方法は散布処理または灌注処理とし、液剤の濃度および処理間隔を変えて効果を比較した。また、植物の生育評価として草丈および本葉数を調査した。散布処理による液剤の効果を、対照のキュウリ(水のみ)との選択実験で比較したところ、100倍希釈の液剤を4日および6日間隔で処理した場合でのみ、ミナミキイロアザミウマの定着数が有意に半数以下まで減少した。このうち、植物の草丈と本葉数に影響が見られなかったのは、6日間隔で処理した場合のみであった。一方、4日間隔で処理した場合は、植物の草丈が有意に低下するものの、本葉数に影響は見られず、食害面積も有意に減少した。続いて、灌注処理による液剤の効果を選択実験で比較したところ、100倍希釈の液剤を3日、4日および6日間隔で処理した場合に、ミナミキイロアザミウマの定着数および食害面積が有意に減少した。しかし、植物の草丈および本葉数は、これらの条件で有意に減少した。以上のことから、キュウリの生育抑制を回避しつつ、ミナミキイロアザミウマの定着および食害を抑制するためには、100倍希釈の液剤を4日から6日間隔で散布処理する必要があると考えられた。本研究は生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて実施した。


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