| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-11  (Oral presentation)

サワガニに寄生するシナノビルの吸着行動に関する研究
Studies on the Sucking Behavior of praobdellid leech(Myxobdella sinanensis); a Parasite on Japanese freshwater crab(Geothelphusa dehaani)

*百済天斗, 河内香織(近畿大学)
*Takato KUDARA, Kaori KOCHI(Kindai Univ.)

サワガニGeothelphusa dehaaniはサワガニ科の日本固有種であり,本州から九州にかけて淡水にのみ生息する.シナノビルMyxobdella sinanensisは,ネンマクビル科で,日本固有種である.両種は河川上流域に同所的に生息しており,シナノビルは2017年にサワガニを捕食していることが発見された.ヒル類についての研究は遅々として進んでおらず,上記以外の情報は2022年2月にシナノビル幼体が人の結膜に寄生している症例が初めて報告されたのみである.両種の関係や生態については不明な点が多く,筆者らはサワガニがシナノビルに対して応答行動を示すことを確認したが,その行動の詳細について未解明である.そこで本研究では,サワガニの応答行動の由来,吸着行動の詳細の解明を目的とする.奈良県奈良市の矢田山渓流でシナノビルとサワガニを捕獲した.サワガニとシナノビルを用いて,視覚及び接触によるサワガニの応答行動(実験1),サワガニとシナノビルの飼育水を用いてケミカルキューによるサワガニの応答行動(実験2)を見る実験を行った.両実験ともにサワガニが石外にいた時間と移動距離をヒルの有無,飼育水の有無で評価した.さらに実験3として,ヒルを複数匹飼育している水槽にカニ雌雄1匹ずつ投入し捕食行動を観察した.そして捕食されたサワガニの雌雄,はさみの左右,捕食後の生残率,吸血時間,吸血量を計測した.実験1の結果,石外にいた時間はヒルなしの条件に比べて,ヒルありの条件で有意に長く,移動距離に差はなかった.実験2の結果,ヒル飼育水ありの条件と飼育水なしの条件で石外にいた時間,移動距離どちらも有意な差は見られなかった.実験3については25回の捕食行動を記録した.サワガニの雌雄に偏りはなかった.はさみの左右について雌では偏りはみられなかったが,雄では右側に多く吸着した.生残率は16%だった.吸血時間は死亡個体に比べ,生存個体のほうが有意に多かったが,吸血量は死亡個体と生存個体で差はなかった.


日本生態学会