| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-02  (Oral presentation)

気候変動のブナ林、アカガシ林の林分構造に対する影響評価
Effects of climate change on stand structures of Fagus crenata and Quecus acuta forests

*遠山弘法(国立環境研究所), 中静透(森林総合研究所), 角谷拓(国立環境研究所), 竹内やよい(国立環境研究所)
*Hironori TOYAMA(NIES), TORU NAKASHIZUKA(FFPRI), TAKU KADOYA(NIES), YAYOI TAKRUCHI(NIES)

21世紀の間に生じた気候変動は、過去6500万年間で最大と言われている。特に温暖化は顕著で、世界の平均気温は100年あたり0.73度上昇し、日本では1.21度上昇している。温暖化に伴う生物種の北上、高所方向への移動は中緯度~高緯度地域で報告されており、メタ解析の結果、種の分布域は10年で16.9km 北上し、11m 高所へ移動していることが知られている。日本では、ナガサキアゲハの北上、シカやサルの高所への拡大、シシアクチ、クサトベラ、タシロラン等の南方系植物の北上が観察されているが、広域における長期間の生物個体群の変化を検出した研究例はいまだ限られている。種分布モデルを用いた将来予測によると、日本の冷温帯林に特有のブナでは、南限付近での生育適地面積の減少と北限付近での分布拡大の制限が予測されており、衰退する可能性が示唆されている。一方、冬期の気温によって分布が制限される暖温帯を代表するアカガシにおいては、適域面積の増加、北方への分布拡大、および高所への分布拡大が予測されており、ブナの衰退後に侵入する可能性が示唆されている。そこで本研究では、ブナ林とアカガシ林に着目し、温暖化に伴う林分構造の変化を明らかにすることを目的とした。対象としたのは、約40年前に全国に設置された特定植物群落のブナとアカガシが優先する森林である。全国81か所を選定し、過去調査が行われた場所で2016年から2021年の間に、森林を構成する樹木群集の組成について100m×10mのトランセクトによる再調査を実施した。予備的な解析の結果、暖かさ指数の増加に伴う、ブナの減少傾向とアカガシの増加傾向が見えてきた。また、暖か指数の変化量が大きい場所では種の置き換わりが大きいことが分かった。発表では、追加解析の結果を示し、データの特性を考慮した解析法についても議論を行いたい。


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