| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-001  (Poster presentation)

ミトコンドリアDNAに基づくミヤコヒキガエル Bufo gargarizans miyakonis の系統地理
Phylogeography of Miyako toad, Bufo gargarizans miyakonis, inferred from mitochondrial control region

*笠谷幹朗, 竹内寛彦(日本大学)
*Mikio KASATANI, Hirohiko TAKEUCHI(Nihon Univ.)

ミヤコヒキガエルは, 琉球列島宮古諸島のみに分布し, 沖縄諸島や八重山諸島等では確認されていない.島嶼における両生類の多様性には島の大きさや標高が大きく関係するとされているが,宮古諸島は面積が狭く標高も低いため,ミヤコヒキガエルの分布パターンは極めて奇異であると言われている.そこで本研究では,ミヤコヒキガエルの集団成立史の解明を目的として,ミトコンドリアDNAの調節領域を用いた分子系統解析により系統的位置,集団内の遺伝的多様性及び個体群動態史を調べた.系統推定の結果から,ミヤコヒキガエルはアジアヒキガエルの大陸東部集団と近縁であり,単系統性は支持されなかった.これらの結果から,ミヤコヒキガエルの起源は大陸東部であり,複数回の流入があったと考えられた.また,分岐年代推定の結果,近縁集団との分化は中期更新世以降であると推定された.宮古諸島で発見された化石記録から大陸–宮古諸島間の陸橋の存在が示唆されているが,ミヤコヒキガエルもこの陸橋を経由して宮古諸島へ侵入したと推測された.集団内の解析結果から,ミヤコヒキガエルは比較的遺伝的多様性が高い集団であり,過去に急激な個体群膨張を経験していることが示唆された.個体群膨張の開始時期は氷期最盛期よりも古いことから,海退に伴う島の面積増加と環境収容力の安定が主要因になったと考えられた.さらに,宮古諸島内の地理を反映した集団構造が示唆された.集団構造は海退と海進に影響を受けた遺伝子流動の結果であると推測された.


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