| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-010  (Poster presentation)

温度環境の季節的な変化はヒガシ二ホントカゲの利用環境を変化させるか
Do seasonal changes in thermal environment alter the habitat used by Plestiodon finitimus?

*伊與田翔太, 立脇隆文(人間環境大学)
*Shouta IYODA, Takafumi TATEWAKI(Univ. of Human Environments)

外温動物であるトカゲ類にとって適切な温度環境で活動することは,適切な体温を維持するために重要である.季節的な温度環境の変動は適温の空間分布を変化させるため,トカゲ類の利用環境を変化させると予想される.本研究では,温帯域に生息するトカゲ類であるヒガシニホントカゲ(以下:トカゲ)の撮影個体数と気温との関係を推定し,トカゲの利用環境の季節変化を気温の観点から理解することを目的として調査を行った.2020年12月から2021年11月の間に愛知県岡崎市に位置する人間環境大学構内の階段に隣接する林縁部と林内部に各5台の自動撮影カメラをドリフトフェンスとともに設置し,1分に1度撮影するタイムラプスモードでトカゲの利用頻度を評価した.また,環境要因として,カメラごとに1分間隔での地表付近の気温(以下:気温),樹冠率,土壌硬度,階段からの距離を計測した.撮影個体数と気温を1時間単位に集計し統計解析を行った.その結果,トカゲは4月から10月に撮影された.撮影地点数は8月で最も多く,林内部の1地点を除く9地点で撮影された.撮影時は非撮影時よりも有意に気温が高く(P < 0.05),夏季は他の季節よりも撮影時と非撮影時の平均気温の差が小さかった.トカゲの撮影個体数と気温の関係を推定するため,撮影個体数を応答変数とし,平均気温の2乗値,平均気温,樹冠率,階段からの距離,調査月を説明変数,オフセット項に1時間の有効撮影枚数,カメラ設置地点をランダム効果とし,ポアソン分布を仮定し,対数リンク関数を用いた一般化線形混合モデルを用いて解析を行った.AICを用いた総当たり法により変数選択を行ったところ,平均気温の二乗値,平均気温,樹冠率と調査月が選択され,気温が35.1℃で撮影個体数が最大になると予想された.これらの結果から季節的な気温の上昇により,日当たりの悪い森林的な環境も利用することが明らかになった.


日本生態学会