| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-016  (Poster presentation)

絶対単為生殖型ミジンコの休眠卵生産に関わる遺伝子の探索
What genes promote the resting egg production of obligate parthenogenetic Daphnia pulex?

*丸岡奈津美, 牧野能士, 占部城太郎(東北大学)
*Natsumi MARUOKA, Takashi MAKINO, Jotaro URABE(Tohoku Univ.)

 ミジンコ(Daphnia)属は、休眠卵を生産することでプランクトン生活に不適な環境を乗り越え、個体群を存続させている。プランクトン生活に不適な環境には、水の干上がりや冬季低温などの他、捕食者が増加する季節や、餌をめぐる競争で劣位となり排除されてしまう状況も含まれる。このように、休眠卵生産はミジンコ個体群の存続に不可欠であり、休眠卵生産を促す要因については多数の報告があるものの、どのような遺伝子(群)が休眠卵生産の頻度やタイミングを支配しているのかは未解明である。そこで本研究では、雄と交尾することなく休眠卵を生産する絶対単為生殖型Daphnia pulexを研究対象に、RNA-seq解析による休眠卵生産に関わる遺伝子の網羅的な探索を実施した。
 実験には、同じ飼育条件下で休眠卵生産する遺伝子型(JPN2G)と休眠卵生産しない遺伝子型(JPN1A)を用い、JPN2G個体の休眠卵生産前後での3成長段階と各段階に相当する休眠卵生産しないJPN1A個体を対象にRNA-seq解析を行った。これら個体間で発現変動する遺伝子群について比較解析を行い、休眠卵生産の際に発現変動する遺伝子群を検出した。その結果、休眠卵生産に関与していると考えられる16の候補遺伝子が特定された。そこで、これら候補遺伝子についてGO(Gene ontology)解析を行い、その機能について探索した。その結果、16の候補遺伝子には長鎖脂肪酸の生合成経路に関わる遺伝子が有意に多く含まれていることがわかった。今後はこれら候補遺伝子について機能解析を実施し、実際に休眠卵生産を変化させるのか確かめる予定である。


日本生態学会