| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-031  (Poster presentation)

石狩浜海岸林における潜葉性昆虫群集の時空間動態解析
Spatiotemporal community dynamics of leafmining insects on Quercus forest at Ishikari coast

*松浦輝(北大・環境), 内海俊介(北大・FSC)
*Akira MATSUURA(Hokkaido Univ. EES), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ. FSC)

群集の種構成や個体数の変化は群集形成にかかわる生態学的に重要なテーマであり、これまでも多くの群集動態に関する研究が行われてきた。このような群集動態はこれまで主に空間的な群集の変化や環境要因との関連に注目されており、時間的変動・時空間的変動に関しては、理論的な背景や解析手法の不足から研究が不足している。しかし、近年群集動態の解析手法が考案されつつあり、群集の時空間動態を扱った一部の研究では時間と空間で異なる変動様式を示すことが知られてきた。そのため、群集動態の時空間的な解析を行い、地空間動態に関する知見の蓄積が必要となっている。
本研究では近年考案されたpermutation based path analysisを用いて石狩浜海岸林における潜葉性昆虫の群集構造の時空間動態解析を試みた。解析対象として6地点、7時点の計42群集を用い、群集の種構成、各種の個体数、個体群成長率のそれぞれに基づく非類似度を解析した。動態の説明変数には本手法を考案した先行研究に従い、個体群内部の変数として2地点間の個体数の平均値、種数の差、個体数の差を、時空間的な差として地理的な距離と調査時点間の日数の差、季節の違いを用いた。また、その他の環境変数には気温、降水量、寄主植物を用いた。
解析の結果、目的とする非類似度ごとに異なるパターンが検出された。種構成に基づく解析では、季節の差と気温が影響を持ち、希少種の個体数の変化が反映されていた。個体数に基づく解析では、局所個体群の個体数が強い影響を持ち、特定の優占種の変化が大きく他種の変動をとらえることができなかった。個体群成長率に基づく解析では、季節差と気温が強い正の影響を持つ一方で地理的な距離は負の影響を持ち、サイトごとに異なる他の環境要因が影響する可能性が示された。本研究の結果は群集構造の時空間変動とその要因についての先行的な知見となりうる。


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