| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-033  (Poster presentation)

異なる植生構造下でのミヤマシジミ・アリ・寄生者2種の相互作用の変動要因
The factors causing the dynamics of interactions among Plebejus argyrognomon, ants, and 2 types of parasitoids under different vegetation structures.

*葉雁華, 出戸秀典, 宮下直(東京大学)
*Yenhua YEH, Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(The University of Tokyo)

天敵からのトップダウン効果は植食性昆虫の個体群動態に及ぼす重要な影響の一つである。多くの植食性昆虫はアリと共生関係を結び、アリの防衛効果によりトップダウン効果を軽減している。しかし、天敵のギルド(または分類群)が1つ以上ある場合、防衛共生とトップダウン効果の相互作用は複雑になる。まず、アリとの防衛共生は天敵のギルドによって効果がないことがある。またトップダウン効果の強さは、植生構造や天候など外部要因にとっても左右され、その影響は2種のギルドの間で異なる可能性もある。例えば、寄生性天敵のヤドリバエとセンチュウが同時にいる時、アリはヤドリバエを排除できるが、夜行性のセンチュウには防衛効果がないことが予想される。また雨が多く湿度が高い時期にはセンチュウが活発になるが、ヤドリバエの活動能力が限られると考えられる。
本研究の目的は、農地の土手の草地に生息する絶滅危惧IB類のミヤマシジミを対象に、共生アリや寄生者2種(ヤドリバエ・センチュウ)との相互作用が、植生構造や天候によってどのように変化するかを明らかにすることにある。
生息環境からの影響を解明するため、植生構造の異なる処理区を設置した。農地の土手において植生構造は主に草刈りで変化するため8ヶ所の調査地で草刈りを行い、調査地毎に3段階(低刈り:0-3㎝・中刈り:7-15㎝・高刈り:20㎝)の処理を行った。フィールド調査では、2021年5月から10月まで、全調査地でミヤマシジミの幼虫における共生関係や寄生関係を調査した。共生関係については幼虫に随伴するアリの種類や個体数などで調べ、寄生関係については本種幼虫の寄生者は体内寄生のため幼虫を採取・飼育して調べた。また、取得したデータからミヤマシジミの幼虫・共生アリ・寄生者2種の相互作用を推定し、それらの相互作用に影響する要因を検証した。


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