| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-035  (Poster presentation)

ハヤブサとオオタカの捕食行動 における視点の違い
Differences in visual fields at predatory behavior between goshawk and  falcon

*高橋芳歩, 村上正志(千葉大学)
*Kaho TAKAHASHI, Masashi MURAKAMI(Chiba Univ.)

生物にとって別の物体に接近しこれを捕らえることは、必須の過程である。猛禽類は主に動物を獲物とするが、獲物は逃避行動を示すため、捕獲は簡単な過程ではない。猛禽類の追跡行動として、獲物への接近過程については多くの先行研究があるが、獲物を捕える瞬間、つまり捕獲の研究例はほとんど見られない。また、猛禽類の眼には、視力が高く片目を用いる深部焦点と両目を用い立体的に見る浅部焦点の二つの焦点があるが、これらの焦点の切り替えと捕獲の関係については明らかになっていない。本研究では、生態が似ているラナーハヤブサ(Falco biarmicus)とオオタカ(Accipiter gentilis)を用いた。ハヤブサ目とタカ目は系統的に遠く、捕獲行動は独立に進化したものである。実験には飼育個体を使用し、疑似餌のルアーを、投げ上げて捕まえさせる「キャッチ」と、捕獲直前で動かし捕まえさせないようにする「パス」の二条件について、羽ばたきや顔の向きをカメラで、飛行速度をGPSでそれぞれ記録した。その結果、ハヤブサはパスでは羽ばたきによる加速が見られ、パスの瞬間にルアーから顔を逸らしていた。一方キャッチでは、捕獲前に羽ばたきをやめ減速が見られ、常にルアーの方を向いていた。オオタカはパス、キャッチ共に減速し、捕獲直前に羽ばたきによる姿勢の制御が見られた。パスではルアーの方を向いていない瞬間があったが、キャッチでは常にルアーの方を向いていた。これらの結果から、ハヤブサは捕獲体勢に入るか否かの判断をするが、オオタカは獲物に接近すると必ず捕獲体勢に入ると考えられる。また、二種は共に獲物に接近した段階で深部焦点から浅部焦点に切り替え、ハヤブサは捕獲を諦めた場合、獲物通過時に深部焦点に再度切り替えていることが示唆される。


日本生態学会