| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-039  (Poster presentation)

太平洋沿岸の岩礁潮間帯固着生物群集の動態:海流系と海流変動の影響
The dynamics of rocky intertidal sessile communities along the Pacific coast of Japan: effects of ocean current system and current fluctuation

*石田拳(北大・院・環境), 立花道草(北大・院・環境), 堀正和(水産研究・教育機構), 奥田武弘(水産研究・教育機構), 山本智子(鹿児島大学), 仲岡雅裕(北海道大学), 野田隆史(北海道大学)
*Ken ISHIDA(GSES,Hokkaido Univ.), Michikusa TACHIBANA(GSES,Hokkaido Univ.), Masakazu HORI(FRA), Takehiro OKUDA(FRA), Tomoko YAMAMOTO(Kagoshima Univ.), Masahiro NAKAOKA(Hokkaido Univ.), TAKASHI NODA(Hokkaido Univ.)

黒潮と親潮とではさまざまな環境要因が大きく異なるうえ、ともに大きな海流変
動を示す。これらの海流系の違いとそれぞれの海流変動が沿岸生物群集に及ぼす
影響については、優占種の違いや一部の種の加入量、死亡率、アバンダンスの時
空間変異を引き起こすことが報告されているものの、群集の動態特性の地理変異
に及ぼす影響については評価された例はない。

そこで、本研究では、岩礁潮間帯固着生物群集を対象に、これらの海流系の違い
とそれぞれの海流変動が代表的な群集の動態特性である時間不変動性の地理変異
に及ぼす影響を評価した。太平洋沿岸の6地域(北海道東部、北海道南部、三陸、
房総、南紀、大隅) において、各地域で5海岸に存在する2~5個の岩礁で2003年
から2018年までの期間岩礁潮間帯の固着生物群集を夏季一回計測し、得られたデ
ータより群集アバンダンス、種数および種組成の時間不変動性を算出し、これら
の値の地域変異に対する海流系の影響を評価した。

その結果、黒潮域は親潮域よりも種組成の時間不変動性が低い一方で、群集アバ
ンダンスの時間不変動性は高かった。また、いずれの海流域においても、海流変
動は、種数と種組成の時間不変動性を減少させさせる一方で、群集アバンダンス
の時間不変動性は増加させた。このような海流系の変動が群集の時間不変動性に
及ぼす影響は、本研究によってはじめて明らかにされた現象であるが、その背後
にあるメカニズムは不明であり、今後の研究課題である。


日本生態学会