| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-058  (Poster presentation)

佐渡島の止水域において、環境要因・管理手法が水生昆虫群集に与える影響
Effects of environmental factors and management practices on aquatic insect fauna in the ponds and the fallow field biotopes on Sado Island

*松村拓樹(新潟大学), 岸本圭子(新潟大佐渡自然共生セ)
*Hiroki MATSUMURA(Niigata Univ.), Keiko KISHIMOTO(SICES, Niigata Univ.)

新潟県佐渡島にはトキの餌場整備のために造成されたビオトープや護岸工事などがされていないため池が多く存在し、これらは止水性昆虫の重要な生息地と考えられる。しかし、佐渡島における止水性昆虫の研究は乏しく、これまでに様々な止水域を網羅的に調査し、複数の環境要因と関連付けて止水性昆虫群集を調べた研究はほとんどない。本研究では佐渡島の止水域を対象に止水性昆虫群集の特性を調査し、水域内の環境、周囲の環境、攪乱との関連について検証することを目的とした。
調査は2021年6月と9月に佐渡島の国中平野および小佐渡に点在する止水域35地点で行った。環境要因は水域内の環境要素として水温、水深、pH、EC、DO、水草被度(浮遊植物、浮葉植物、沈水植物、抽水植物)、外来種の在・不在(アメリカザリガニ、ウシガエル)と、周囲の環境要素として開空度、調査地から半径500、1,000、2,000、3,000m範囲内の水田、森林、その他の止水域の面積率を調べた。また、本研究では攪乱として水域の変動に着目し、調査地を無攪乱(自然池)、小規模攪乱(ため池)、大規模攪乱(ビオトープ)の3つに分けた。
各環境要因が止水性昆虫に及ぼす影響として、コウチュウ目・カメムシ目群集に対しては、攪乱、水深、ウシガエルの存在、開空度、半径500m、1000m内の森林率と水田率が種組成のばらつきを説明しており、大規模攪乱は種群数、個体数ともに正の影響を及ぼしていた。以上から、ビオトープにおける水域の消失が池干しと同様、コウチュウ目・カメムシ目群集の群集構成種の置換をもたらし、ひいては種の多様性が高まったと推測された。また、トンボ目群集に対しては攪乱、水温、pH、DO、開空度が種組成のばらつきを説明しており、DOが個体数に正の影響を及ぼしていた。トンボ目幼虫は鰓呼吸をしているため、DOが高いほど多くの個体数を維持できると考えられた。


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