| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-148  (Poster presentation)

生育環境や生活型が異なる植物種間の、花形質(花色・花形態)の比較
Association of floral traits with life-type, and with habitat, in animal pollinated angiosperms.

*奥沢光稀(富山大学院)
*Kouki OKUZAWA(University of Toyama)

群集集合の規則を解明することは群集生態学の中心課題のひとつである。これまでに数多くの研究が生物種の機能形質に着目し、群集集合における環境フィルタリング(特定の機能形質を持つ生物種の定着を促進/抑制する環境の作用)の役割を明らかにしてきた。しかし、植物群集の集合規則に関する研究で、送紛に関わる機能形質(花色・花形態など)が着目されることは稀である。本研究では、様々な環境に生育する動物媒植物種の花色と花形態を比較することで、送粉環境が環境フィルタリングとして機能している可能性を検討した。
 調査は富山県と長野県に生育している動物媒植物624種を対象に行った。まず各植物種の花色(反射スペクトル)、花の相称性、花筒長を記録した。花色は膜翅目の色覚モデル(bee color hexagon: Chittka1992)に基いて分類した。次に図鑑の記述を参考に、各植物種の生育地を、草原・森林・湿地・高山・裸地・市街地の6つに重複を許して振り分け、生活型を一年生・水生・地中・半地中・地表・地上の6つに分類した。
 以下の結果が得られた。①non-bee-greenish(概ね人の色覚における青や紫)の花色を持つ植物種の割合は、草原や市街地で高く、高山や裸地で低い。②左右相称花の割合は、草原や市街地で高く、高山や湿地で低い。③長花筒花の割合は、草原や高山で高く、裸地や湿地で低い。④生活型ごと、花色/花形態の組成にはいくらかの違いが見られた。
 これらの結果は概ね、それぞれの生育地に期待される送粉環境(草原はハナバチやチョウ類が多い。高山はハエ目が最も多く、次いでマルハナバチが多い。など)に適した花形質を持つ植物種が、それぞれの生育地により多く生育していることを示していた。つまり、送粉環境が環境フィルタリングとして機能している可能性を示唆していた。ポスターではさらに、生育地間の花形質組成の偏りが、生育地間の分類群組成の偏りにどの程度依存しているのかを解析した結果も報告する。


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