| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-202  (Poster presentation)

コバギボウシの柱頭と花柱における集団内・集団間変異
Inter and intra-population variation in stigma and style in Hosta sieboldii

*新島宏嗣, 板垣智之, 酒井聡樹(東北大学)
*Hirotsugu NIIJIMA, Tomoyuki ITAGAKI, Satoki SAKAI(Tohoku Univ.)

植物の花の雌蕊は種によって多様な形態を持つ。雌蕊の形態は訪花者の種類や自殖の程度などにより影響されることが明らかになっているが、種内の変異に関して複数の集団で扱った研究は少ない。そこで本研究では雌蕊の形態に影響する要因を調べるため、4集団のHosta sieboldiiを用い、雌蕊の形態とそれに関わる要因について調べた。
2021年に訪花者相の異なるHosta sieboldii 集団において、柱頭の面積や表面構造、花柱の長さなどについて測定した。また、自然環境下でHosta sieboldiiに訪れる訪花者を観察し、一定時間内に柱頭に付着した花粉量を測定した。
調査の結果、1集団において花柱の長さ・柱頭上の絨毛構造の長さ・胚珠数が他3集団と比較し有意に異なっており、訪花者の種類・数とこれら形質の間に関係性は見られなかった。花柱の長さに関しては全ての集団において花の大きさに依存しており、また柱頭の面積に関しては1集団でのみ花の大きさと個体サイズに依存していた。また、ある集団で柱頭の面積が大きいほど、マルハナバチが一定時間あたりに柱頭に接触する回数は多くなった。ただし、この集団ではマルハナバチの柱頭に接触する回数が多いほど柱頭に付着した花粉量が増加するという関係が見られなかったが、他集団ではそのような関係が見られた。
以上の結果より、雌蕊に関連する複数の形質に集団間で差があることがわかった。花柱の長さに影響する要因として全集団で共通して花の大きさが挙げられたが、柱頭の面積に関わる要因は集団によって異なると考えられ、これらはHosta sieboldiiの雌蕊の形質が複数集団に共通した要因と集団特異的な要因両方によって決まる事を示唆している。また、柱頭の面積が大きいほどマルハナバチの接触回数が多くなった集団において接触回数の増加が付着花粉量の増加につながらなかったのは、その集団ではマルハナバチの訪花の有効性が高く、柱頭面積が大きければ少数回の訪花で十分な花粉量を獲得できたためと考えられる。


日本生態学会