| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-224  (Poster presentation)

都市における在来植物の表現型変異の多様性-一年生草本ツユクサを用いて- 【B】
Various phenotyipic diveregence of anuual native herb in the urban environment 【B】

*中田泰地, 丑丸敦史(神戸大学)
*Taichi NAKATA, Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

21世紀に入り、都市に人口が集中する都市化が世界中で急速に進行している。都市化に伴う人工地増加は、気温やCO₂濃度の上昇、土壌の富栄養化や乾燥など植物の生育地環境を大きく変え、多くの在来植物の個体数激減や局所絶滅を引き起こすため、都市域における植物の多様性減少は大きな問題となっている。一方で、都市環境下で生き残り、開花の早期化や種子散布能力の低下など都市特有の表現型形質を持つ在来種も報告されており、植物の都市環境への適応進化が生じていることが示唆されている。
 これまでの研究では、主に都市と近隣の農地生態系など半自然生態系の植物集団を用いた二項比較を行い、都市適応を議論してきた。しかし、都市域では、残存農地に加え都市公園や花壇、植樹帯、路傍のアスファルトの隙間など植物の生育できる環境は多様化しており、これまでの都市−農地景観の単純な二項比較では植物の都市適応の全体像を明らかにできない。加えて都市における生育地環境の多様性が考慮された研究例は非常に限られており、都市拡大のもたらす植物の適応進化の多様性の実態は把握されていない。
そこで本研究では、多様な都市生育地において、異なる形質変異と都市環境共通の形質変異が混在するという仮説をたて検証を行った。具体的には、複数の都市域(大阪府、兵庫県、京都府)において多様な都市緑地に生育する在来一年生草本ツユクサを対象に、野外環境下にみられる表現型形質の種内変異を定量化し、各生育地に固有もしくは異なる都市生育地で共通する機能形質を特定することを目的とした。京阪神地区における里山水田畦畔5地点、都市水田畦畔5地点、都市公園6地点、都市路傍6地点の計22地点において葉数、植物高、葉面積、SPAD値、SLAの測定を行った。本発表では、都市里山間の形質変異及び都市生育地間の形質変異について議論する。


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