| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-254  (Poster presentation)

ナンキンハゼの資源配分比較
Comparison of resource allocation of Chinese tallow

*上田千尋(京都大学)
*Chihiro UEDA(Kyoto Univ.)

ナンキンハゼ(Triadica sebifera)は中国・台湾を原産地とするトウダイグサ科の落葉高木であり、開けた場所で早い成長速度を示す先駆種的な性質を持つ。また、鳥によって広く種子が散布され、シカによる採食圧の低さなどもあり、外来種として日本における分布を拡大しつつあり、環境省作成の「生態系被害防止リスト」にも名を連ねている 。本研究はシカの被食圧が高い環境においてナンキンハゼの侵入拡大が進んでいると考えられる奈良県春日山にて、2020年10月に野外に自生する実生の大きさや乾燥重量配分などの調査を行った。1~3年生の実生が密生する6地点において実生を引き抜いて採取し、年齢別のグループに仕分けしたのち、各地点で得られた20~45個体の地上部重量、地下部重量、LMA、地上部の長さ、地下部の長さ、地際直径、葉の被食強度を測定した。また、各地点で光環境の測定を行った。測定の結果、4点の傾向が観察された。(1) ナンキンハゼの実生は林内で数10m2以内の倒木ギャップのような明るい環境に集中しており、このような場所の相対光強度は7~26%であった。(2)10月の調査の時点でも子葉がついた発芽直後のような個体が複数確認され、成長期間を通して発芽していることが示唆された。(3)地上部:地下部重量比は個体間で大きくばらついたが、樹高が高いと地上部に相対的に多く投資していた。(4) 全てのサイトにおいて、3年生以上のより大きいサイズの個体の半分以上が葉の被食を経験していたが、2年生未満の個体では20%程度が葉の被食を示した。採取個体上で観察された植食者のほとんどはナンキンキノカワガの幼虫で、同じくトウダイグサ科の在来種であるシラキの葉も食べる。以上の結果から、今後は地上部・地下部への投資配分に影響する環境条件、植食性昆虫等の被食が与える影響などをより詳細に検討することが必要であると考える。


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