| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-270  (Poster presentation)

長良川の関係価値の探索的因子分析
Exploratory factor analysis of the Relational value of the Nagara River

*田嶋結乃, 橋本禅(東京大学)
*Yuno TAJIMA, Shizuka HASHIMOTO(university of Tokyo)

人と自然の関係や自然が介在する社会関係の価値を指す「関係価値」という概念が近年注目されている。関係価値は環境保全の動機付けになると言われており、関係価値の概念への理解を深めることの重要性が指摘されている。先行研究では関係価値は複数の構成概念で構成される点には合意があるものの、論者により構成概念の内容や構成が異なっている。従って、実証研究を重ねて関係価値の構成概念についての知見を深める必要がある。本研究はアンケートによる量的な測定を通して関係価値の構成概念の把握を行うことを目的とする。
関係価値の構成概念を検討するためにアンケートを用いて関係価値の評価を行った後、カテゴリカル探索的因子分析(CEFA)で関係価値の因子を探査した。対象地には長良川流域の9つの市を選定した。関係価値の評価には、5段階のリッカート尺度の21項目の質問項目を用いた。質問項目は、首都圏の在住者を対象に居住地周辺や自然全般に対する関係価値を評価した既往研究に基づき作成した。当該研究では関係価値について6つの構成概念が提示されており、本研究でも同様の結果になると想定した。2021年2月15〜17日にインターネット調査会社を通じてwebアンケートを行い、データを収集した。
調査によって得られた1015サンプルを分析に使用した。CEFAの結果、18項目2因子からなるモデルが採用された。これは本研究が質問項目の作成にあたり参考にした先行研究で示された因子の構造とは異なる。結果が異なった理由として、首都圏と長良川流域という対象地の地域コミュニティ意識の違いや、評価対象が具体的な場所であるか居住地周辺や自然全般という多様な対象であるかといった要因が考えられた。対象地によって関係価値の構成概念の構造が異なったことから、関係価値を評価する際には様々な側面を包括的に捉えることができる質問項目群を用いる必要があることが示唆された。


日本生態学会