| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-271  (Poster presentation)

滋賀県大津市近江舞子内湖の保全利用に対する地域住民の意識 【B】
Local awareness and perception for inland lake conservation in Omimaiko, Otsu-city, Shiga 【B】

*藪田美玖, 深町加津枝(京都大学)
*Miku YABUTA, Katsue FUKAMACHI(Kyoto Univ.)

琵琶湖周辺に点在する湖沼は「内湖」と呼ばれ、水域と陸域の移行帯として豊かな生物相を有した重要な湿地生態系である。内湖の総面積は、大規模干拓などにより1940年と比べて7分の1に減少したが、琵琶湖周辺に分布するヨシ群落の60%が内湖に集中しており、湿地生態系としての価値をはじめとした多面的な価値機能が注目されている。しかし、開発による環境の衰退や人との関わりの希薄化など、近年様々な課題を抱えている。今後の内湖保全へ向けては、地域ごとに異なる住民意識やニーズを考慮し議論を行う必要がある。そこで本研究では、滋賀県大津市近江舞子内湖(以下、内湖とする)を対象地とし、地域住民の内湖に対する意識と価値認識の把握を目的にアンケート調査を行った。集計結果からは、内湖に関する地域活動への参加意欲を示した回答は全体の半数を超え、地域でヨシ刈りを行う市民団体の存在が今後の活動参加への動機付けになっていることが示された。一方で、住民の内湖訪問頻度が低く、内湖の昔の話が地域内で伝承されていない点が課題として抽出された。さらに内湖に対する4つの価値認識を属性別に分析した結果、「景観としての価値」が属性に関係なく広く重視されており、地域の共通認識であることが示唆された。「生態系としての価値」は、転入者の多い自治会外でより高く評価されていた。また、「文化・教育にとっての価値」は転入者や子どものいる家族世帯から高い評価を受け、「経済にとっての価値」は代々地域に暮らす住民やUターン者が利用推進を望む傾向が見られた。今後の内湖保全に向けては、「景観としての価値」を核に地域内外の主体が連携し、内湖の多様な価値を生かしていくことが重要である。


日本生態学会