| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-275  (Poster presentation)

都市化に伴う水田環境の変化がカエル類に及ぼす影響
Effects of environmental change via urbanization on frog communities in paddy fields

*村上龍登, 泉澤俊希, 丑丸敦史(神戸大学)
*Ryuto MURAKAMI, Toshiki IZUMISAWA, Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

 近年、都市化による急速な生物多様性減少が問題となっている。都市域では、人工地の増加による生息地の損失・改変が生じており、様々な生物群における多様性減少の要因となっている。特に両生類は水域と陸域の両方が揃う環境を必要とするため、生息地の環境変化による影響を受けやすく、都市化に伴う両生類の減少が世界各地で報告されている。一方で、都市化に伴う環境変化による影響の受け方は、両性類の種ごとに、それぞれの持つ種特性に依存した形で異なることが示されている。水田性カエル類では水田への定住性や伝統的水田環境への依存度が高く、幼生期間の長い種がより脆弱であることが示唆されている。この時、都市における水田環境の変化に脆弱なカエル類ほど、都市部で個体数はより劇的に減少する一方で、都市環境への耐性が高い種では種間競争の低下を通じて都市部で個体数を増加させうる可能性がある。このような、都市部における両生類の長期的な個体数変化を知ることは、将来的な両生類の都市部での分布を予測する上で重要であるが、検証した研究は非常に少ない。
 本研究では、阪神地域の水田118地点を対象に、水田性カエル類5種についてコールランク手法による準定量的な分布調査を行い、10年前の2011年に計測されたデータと比較することで、本地域での都市拡大が両生類へ長期的に与える影響を検証した。研究では、対象水田の環境として畦畔・水路の状態および近接林までの最短距離を定量し、周辺景観として調査地の中心から半径500m、1000mの範囲内にある緑地、農地、人工地面積を計測した。さらに、調査対象水田について、水田以外の土地利用に変化の有無も評価した。これらのデータを用いて、現在の分布傾向と10年間の分布変化に影響を与えた環境要因について解析を行った。
 発表では、解析結果を踏まえて、各種が都市化に伴う環境変化から受ける長期的な影響と、その種間差について議論する。


日本生態学会