| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-286  (Poster presentation)

時系列データに基づくササ掻き起こし施業の生態系機能評価:森林生態系管理の指針
Evaluation of ecosystem function of soil-scarification based on chronosequence data: Guidelines for forest ecosystem management

*竹内理絵(横浜国立大学), 西澤啓太(横浜国立大学), 小林勇太(横浜国立大学), 増本翔太(横浜国立大学), 鈴木紅葉(横浜国立大学), 河上智也(北海道大学), 片山昇(小樽商科大学), 小林真(北海道大学), 岡田慶一(東京農業大学), 辰巳晋一(森林総合研究所), 高木健太郎(北海道大学), 森章(横浜国立大学)
*Rie TAKEUCHI(Yokohama National Univ.), Keita NISHIZAWA(Yokohama National Univ.), Yuta KOBAYASHI(Yokohama National Univ.), Shota MASUMOTO(Yokohama National Univ.), Kureha F SUZUKI(Yokohama National Univ.), Tomoya KAWAKAMI(Hokkaido Univ.), Noboru KATAYAMA(Otaru Univ. of Commerce), Makoto KOBAYASHI(Hokkaido Univ.), Keiichi OKADA(Tokyo Univ. of Agriculture), Shinnichi TASTUMI(FFPRI), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Akira S MORI(Yokohama National Univ.)

森林生態系において植物の成長と土壌分解の相互作用は生物多様性と生態系機能の主要な推進力であり、土壌分解は有機物の無機化や栄養塩循環を駆動する重要なプロセスである。森林管理では、伐採や造林等に伴って植物と土壌生物相及び関連環境特性を変化させるが、一方で、異なる森林施業の手法が植物-土壌の相互作用系に及ぼす影響とその時間変化については、定量評価が進んでいない。そこで本研究では、森林生態系を特徴づける土壌分解機能に特に着目し、森林施業の違いが植物-土壌系に与える影響を評価した。

調査地は北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林である。北海道では、森林の更新を阻害するササを重機で根ごと掻き起こす施業が実施されている。ササと共に栄養塩等も表土ごと取り除かれるため、土壌の発達過程が掻き起こし施業後の年数に依存する。天塩研究林では、掻き起こし後に自然の樹木加入に任せる天然更新施業と苗木植栽施業の双方を実施している。50年以上前から施業が行われており、多数の年代の天然更新地と植林地を有している。この場所で、各施業、年代ごとの土壌分解機能を、2種類の分解特性の異なるティーバッグ、Green Tea(易分解性リター)とRooibos Tea(難分解性リター)を用いて調査した。

結果として、天然更新地では易分解性リターの、植林地では易分解性・難分解性リターともに、分解率が林齢に沿って有意に増加した。天然更新地では易分解性リターのカンバ類の更新が主であり、植林地では植栽アカエゾマツから難分解性のリターが供給される。よってそれぞれリター質に適した土壌分解に発達していることが分かった。また、施業対象外の天然林と比較すると、天然更新地では天然林に近づく一方、植林地では難分解性リターの分解率が天然林を超えた。植林地では天然林とは異なり針葉樹リターが多く供給されるため、天然林とは別の機能を持った森林生態系を形成していくことが示唆された。


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