| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-288  (Poster presentation)

小面積皆伐後の下層植生の生育規定要因の検討
consideration for growth-determing factors about understory vegetation after clear-cutting

*赤尾智宏(明大院・農), 倉本宣(明大・農)
*Tomohiro AKAO(Meiji Univ. Grad. school), Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

 皆伐更新を中心とする植生管理は、雑木林維持の物理的な駆動力である。現在の雑木林は、管理の減少に伴う大径木化やネザサの競合で荒廃しており、薪炭やその他木材などの物質生産よりも環境・文化資源維持を目指して皆伐を行う選択も重要である。その資源の1つとして、下層植生の花があげられる。これらの生育・開花規定要因の知見は群集レベルで不足している。本研究では複数の規定要因の影響度を評価し、それを踏まえた管理を検討した。
 調査は狭山丘陵(埼玉及び東京)の雑木林にて行った。過去数年から20年の間に小面積皆伐が実施された箇所を中心に、計125個の1m四方調査区を設けた。2021年4月から2022年2月にかけて、開花植物調査とフローラ・優占種調査を数回実施した。併せて展葉・落葉期の開空率やリターの割合なども記録した。以上の調査セットについて、GLMMや分類樹木などを用いて、開花種数からみた様々な規定要因への応答を調べた。
 4-5月の開花種数は、アズマネザサの植物体量(5-6月)に対し負の応答を、それ以外の植物体量に正の応答を示した。6-7月の開花種数は、夏の出現種数に対し正の応答を、展葉期の開空率にやや正の応答を示した。両時期に開花を確認した調査区は、天空率が高く出現種数も多かった。
 皆伐に伴う光環境の改善は季節ごとの開花を促す一方で、開花種数に影響を与える要因は季節により様々である。春過ぎの場合、地上部を覆うネザサが種数を制限し、草本の植物体成長量が大きい箇所では、その成長前に多くの種が開花する傾向がある。一方で梅雨から初夏では、特定の種のみが優占しない出現種数の多い環境が適する傾向がある。したがって、ネザサと梅雨に成長する下層植生の両方を制御するための下草刈りは欠かせないだろう。
 発表では、多くの調査区で開花した種と局在開花した種の花数からみた応答や秋以降の結果も扱う。


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