| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-292  (Poster presentation)

落葉とその浸出溶存物質の炭素・窒素・リン比:樹種による違い
Tree species-specific C:N:P of the leaf litter and its leachate.

*中島涼菜(東北大学大学院)
*Suzuna NAKAJIMA(Tohoku University)

 葉の炭素・窒素・リン含量は、樹木の栄養状態や分解速度に影響することから、様々な樹種で測定されてきた。しかし、落葉が水に浸漬した際のこれら生元素の溶出効率や、その樹種間での違いはよく分かっていない。水に浸漬した際の葉からの溶出効率や、そのストイキオメトリーが樹種によって異なるなら、河川・湖沼生態系の栄養動態は集水域の被覆のみならず、樹種構成にも大きく影響されることになる。そこで本研究では、コナラ、アカマツ、カラマツ、スギなど東日本に一般的な10樹種の落葉を対象に実験を行い、炭素(溶存態有機炭素:DOC),窒素(溶存態全窒素:TN),リン(溶存態全リン:TP)の溶出効率を測定した。具体的には、各種落葉一定量を水に浸し、1、3、7、14、21、28日に浸した水のDOC 、TN、TP濃度を測定した。測定値をMichaelis–Menten式に当てはめることで、各元素の最大溶出効率(Dmax)と溶出親和性(半飽和定数: K)を算出した。
 実験に用いた落葉のC/N、N/Pモル比はそれぞれ370〜4500、15〜18と樹種により異なっていた。実験の結果、DmaxやKは樹種や元素により異なり、Dmaxはいずれの樹種の落葉でもTNで極めて小さく、平均して3%(1〜8%)、次いでDOCで14%(3~30%)であった。一方、TPのDmaxは平均で50%(40〜100%)とTNよりも10倍以上高かった。この結果から、落葉のリン含量は少ないが、いずれの樹種でも浸漬した際のリン溶出効率は高いこと、したがって落葉は水圏生態系の重要なリン源となり得ることが分かった。なお、落葉のC/N、N/P比やリン含量(比乾燥重量)と、リンのDmaxやKとの間には明瞭な関係は見いだせなかった。また、実験には広葉樹種と針葉樹種が含まれていたが、それら樹種の間でもDmaxやKには有意な差は検出されなかった。


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