| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-303  (Poster presentation)

森林斜面におけるセシウムボールの分布
Distribution of radiocesium-bearing microparticle along the forest slope

*長澤和佳, 村上正志(千葉大学)
*Waka NAGASAWA, Masashi MURAKAMI(Chiba Univ.)

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う、福島第一原子力発電所事故で放射性物質が放出されたが、特にセシウム137による放射能が最も大きい。放射性セシウムは、化合物として塵などに結合して飛散したと考えられていたが、近年の研究でセシウムボールという高放射能の粒子(CsMP: Cesium Microparticle)が報告された。セシウムボールとは、原子炉のメルトダウンによって溶けた建屋のコンクリートと放射性セシウムがケイ酸塩ガラスに取り込まれて粒子となったものである。CsMPについては、1粒当たり1~10 Bqの放射能が報告されているが、これは1000億Bq/g の濃度に相当する。セシウムボールは比較的比重が小さく、また粒子状であるため、土壌に吸着せず斜面において土壌とは異なる動きを示す可能性がある。このような放射能をもつセシウムボールが、森林内でどのように分布しているのか、また、飛散定着のあとの移動の可能性については明らかになっていない。そこで本研究では、1.環境サンプル中からのセシウムボールの単離方法を確立し、2.高濃度汚染地域の森林斜面においてイオン態の放射性セシウムと粒子状のセシウムボールで分布に差が見られるか確認することで、森林斜面におけるセシウムボールの動きを推定することを目的とする。調査地は福島第一原発周辺の、高瀬川、請戸川、熊川、小国川流域の森林4箇所とした。それぞれの森林に10 m x 10 m の小区画を作成し、土壌サンプルを採集した。サンプル採集後、ゲルマニウム半導体検出器による放射能測定、イメージングプレートによるセシウムボールの位置の特定、単離を行った。請戸川の斜面上部、中部、下部で土壌中のセシウムのうち、セシウムボールが占める割合を比較したところ、上部で貢献度が小さく、中部や下部で高くなっていたことから、斜面上部のセシウムボールが斜面中部に流され、一部は下部にまで達していることが分かった。


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