| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-306  (Poster presentation)

冠雪害を受けた冷温帯スギ林における粗大木質リターの分解呼吸 【B】
Respiration from coarse woody debris in a cool-temperate Japanese cedar forest damaged by heavy snow 【B】

*小杉朋幹(岐阜大・応用生物), 斎藤琢(岐阜大・流域研)
*Tomoki KOSUGI(Fac Appl Biol Sci, Gifu Univ.), Taku M SAITOH(RBRC, Gifu Univ.)

冠雪害を受けたスギ林分では,立枯れ木,倒伏木といった粗大木質リター(CWD)が同時期に発生する。このようなCWDにおける分解呼吸速度(RCWD)の時空間変動を把握することは,撹乱を受けた森林における炭素動態を理解する上での需要な基盤情報となる。そこで本研究では,冠雪害により発生したスギの立枯れ木と倒伏木において,RCWDの時空間変動の解明を試みた。特に,CWDの地面からの距離および地面との接触がRCWD に及ぼす影響に着目して解析を行った。調査は2014年12月に冠雪害を受けた岐阜県高山市の常緑針葉樹林サイトにおいて,2021年4月~11月の期間に7回行った。調査対象は,立枯れ木の地上高0.3 m,1.1 m,2.7 mの各部位,および樹皮が無い倒伏木の側面と接地面とし,それぞれ6サンプル(ただし,立枯れ木の地上高2.7 mの部位は3サンプル)を用意した。チャンバー法によってサンプル表面のRCWD を計測し,同時に,サンプル内部の温度(TCWD)および体積含水率(WCWD)を計測した。その結果,立枯れ木における全計測期間の平均RCWDは,地上高が高くなるにつれて低下しており,その鉛直変動の主要因はWCWDであることが明らかとなった。接地面における全計測期間の平均RCWDは側面における全計測期間の平均RCWDを上回っていた。接地面と側面の間には,全計測期間の平均TCWDおよび平均WCWDに大きな違いは見られず,接地面のRCWDが側面のRCWDよりも高くなった要因はTCWDおよびWCWD以外であることが示唆された。また,RCWDの季節変動は,立枯れ木の地上高1.1 m以下の観測部位および倒伏木の全ての観測部位において,TCWDを変数としたQ10式によって概ね説明された。一方で,立枯れ木の地上高2.7 mの部位では,RCWDの季節変動がTCWDよりもWCWDに強く依存していた。この結果から,RCWDの季節変動は概ね温度に依存するが,地上高が高い部位では,水分量による制限を受けることが示唆された。


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