| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-315  (Poster presentation)

送粉者の応答多様性をもとにした変動気象下での生物多様性—生態系機能の関係性予測
Estimating biodiversity-ecosystem functioning relationships in a crop pollinator community under the fluctuating weather

*夏目佳枝(東京大学), 長田穣(水産研究・教育機構), 永野裕大(東京大学), 宮下直(東京大学)
*Kae NATSUME(Univ. Tokyo), Yutaka OSADA(NRF), Yuta NAGANO(Univ. Tokyo), Tadashi MIYASHITA(Univ. Tokyo)

生物多様性が生態系機能を高める仕組みとして、種間で環境変動への応答が異なることで時空間的に機能のばらつきを低減する保険仮説が唱えられている。これを検証するために、種の応答形質及びその種間での非同調性を定量化し、機能の安定性への効果を議論する研究がされてきた。このような応答形質に加えて、種ごとの機能の大きさも保険効果の強さに影響することが理論的にわかっている。しかし、種の応答と機能の大きさ両方を定量化した上で、多様性がサービスを高め、安定化することを実証した研究はほとんどない。特に、気象への応答は、気候変動に対する生態系機能のレジリエンスにも重要である。そのため、本研究では、ソバへの送粉サービスを対象に、生物多様性と生態系機能の関係が気象への応答多様性、機能の大きさによってどのように駆動されるか解明する。
送粉サービスは、作物種の75%が依存する重要な生態系機能であり、ソバの生産も昆虫送粉に依存する。外温動物である昆虫の訪花は気象に強く影響され、応答の多様性が存在することも検証されてきたが、先行研究では機能の指標として訪花頻度のみを扱っており、結実などの直接的指標を用いているものは未だ無い。送粉効率は、形態や行動の多様な昆虫において大きくばらつくため、直接評価される必要がある。本研究では、種の送粉効率を1回訪花あたりの結実確率と定義し定量化した。これと訪花頻度の積を送粉サービス量とした。気象への応答形質は、気温・日射時間・風速と時間の計4軸と訪花頻度の関係から種のニッチを定量化することで評価した。このニッチの種間のばらつきを応答多様性と定義した。
送粉者の種数がサービスを高め、安定化するか検証するため、種数の異なるランダム群集が供給する送粉サービス量を、過去約50年の気象条件の場合で算出し、種数、応答多様性との関係を可視化する。これらと気象条件、種の形質との関係を議論する。


日本生態学会