| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-325  (Poster presentation)

鳥類の翼先端形質は飛翔特性と生息環境に対応する
The trait of primary feathers well predicted by the flight habits and habitats of birds

*姜雅珺(千葉大・院・融), 村上正志(千葉大・院・理)
*Yajun JIANG(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), Masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

鳥類の翼は「飛翔」という基本的な機能をもつが、翼先端の形態がその空気力学的性能と強く関連するといわれている。先行研究により、鳥の羽ばたき飛翔において、翼先端部 = hand-wingで生じた揚力と推進力の割合が翼全体の中で高いことが示され、翼先端の形態が飛翔機能と密接に関連すると考えられる。翼先端形態としては、翼端スロットがその機能において特に重要であることが示されている。翼端スロットが低アスペクト比の翼と連動することで、鳥の離陸性能と飛翔性能が改善することも示されている。これらの鳥類の翼形態と空気力学的特徴は、採餌行動や生息地選択と関連すると考えられる。さらに、発表者の修士研究における観察で、翼先端形態により、乱流による攪乱時に揚力の上昇効果が生じる可能性があることが分かっている。これまで、鳥の翼機能形態と飛翔に関する研究は多いが、翼端形質に注目しその飛翔性能との関係を解析することで、鳥類種間での翼機能の違いをより詳しく評価する必要性がある。そこで本研究では、87種の異なる飛翔行動と生息環境をもつ鳥類について、飛翔性能に関わると考えられる翼先端形質を、van Oorschotの提案した指数 E (Emarginate index) とTi (wingtip sharp index) で評価し、アスペクト比で翼全体の形を評価した。そして、系統を考慮した上で、翼先端形質が鳥類の飛翔行動や生息環境と相関を示すか解析をおこなった。その結果、飛翔行動、生息環境と、翼先端形質の間に顕著な相関があることがわかった。森林、草原、都市などに生息し、羽ばたき飛翔行為を持つ鳥類は、特に高い翼端スロット(E)と低アスペクト比の翼をもっていた。また、翼端スロット (E)、翼端尖度 (Ti)、アスペクト比は、それぞれ著しい系統シグナルのもつことが示された。さらに、飛翔行動はアスペクト比としか相関しない。一方、生息環境は翼端スロット、アスペクト比と相関がみられた。これらの結果から、翼先端機能形質が鳥の飛翔にとっての重要性が示された。


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